苦悩のち覚醒。成長を語るうえで久保建英の恐るべき能力が…【東京五輪代表のルーツ探訪・後編】

カテゴリ:日本代表

白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

2021年07月22日

18年に下したある決断

16年11月の長野戦で後半頭からピッチに立ってJデビュー。巧みなフェイントで敵を抜き去る場面もあった。写真:(C)J.LEAGUE

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 東京五輪で悲願の金メダル獲得を目指すU-24日本代表。全世界注目の戦いに挑む彼らは、この大舞台に辿り着くまでどんなキャリアを歩んできたのか。

 ここでピックアップする久保建英は13歳の時にクラブのある違反行為によりFCバルセロナ(下部組織に在籍)を退団し、失意の帰国を余儀なくされた。しかし、その後に在籍したFC東京では最高の仲間にも恵まれ──。非常に濃密で、掛け替えのない4年間を過ごすことになる。

 前編に続く後編をお届けしよう。

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 話は前後するが、16年11月の長野戦でJリーグデビュー(久保はJリーグ最年少出場記録を15歳5か月1日に更新)させたのは「話題作りが目的だったわけではない」と、当時FC東京U-18の監督だった佐藤一樹は明言している。

「私はFC東京U-23のコーチも兼任していたので、(同U-23監督の)安間(貴義)さんやクラブと情報を共有しながら、建英の成長速度なんかを見ていました。いろいろな前提条件をクリアした結果、あの試合で起用しようとなっただけです」

 話題先行ではなく、その実力に見合ったステージを用意する。佐藤が久保を高みに導くうえで意識したのはそんなスタンスだろう。

「ユースの練習でどれだけ判断を早くしろとか、プレーの強度を上げろとか言っても限界はあります。より高いレベルでプレーして、そこでの感覚を身体に沁み込ませることで伸びていく部分はあります。フィジカル的な能力が高まってきたタイミングで建英をトップチームに(2種登録として)合流させたのも、そうした狙いがあったからです。上昇志向が強い彼は常に刺激を求めていましたから、ユース年代のうちからトップチームで試合をできたのは良い経験になったと思います」

 ユース年代の大会で目に見える結果を残した久保は、17年5月3日の北海道コンサドーレ札幌とのルヴァンカップでトップチーム・デビューを飾ると、同年11月1日にFC東京とプロ契約。FC東京U-15むさし時代のコーチだった京増雅仁が「建英の特徴のひとつはパスもシュートも含むキック。最終局面での決定力という点でチームに貢献していました」と証言するように、飛び級で実戦経験を積んだ久保は高校2年生にしてオフェンス面に限ればトップチームで通用するレベルにあった。卓越した攻撃センスについては、佐藤も次のように説明する。

「意図したところにボールをコントロールしたり、蹴ったり、運べたり、技術的なベースはしっかりしていました。そのうえ、2手、3手先を考えてプレーできる能力も備えていた。目の前の相手をどうかわすかではなく、その先、どうしたらゴールに繋がるかを考えていましたね」
 
 しかし、プロとして初めて臨んだ18年シーズン前半はFC東京のトップチームで苦しむ。スタメンの座を掴むどころか、ベンチ入りの機会も徐々に減っていった。そんな久保を見た京増の印象はこうだった。

「課題が出た感じ。守備やハードワークの部分がJ1のレベルには達していませんでした」

 実際、FC東京を率いる長谷川健太監督も「J1で戦うにはまだ足りないところがあった」とコメント。ひとつの壁みたいなものにぶち当たった久保は、そんな現状を打破しようと「新たなチャレンジをしたい」とクラブに直訴。こうして18年8月、横浜F・マリノスへの期限付き移籍を決断した。

 その新天地で自身のJ1初ゴール(24節のヴィッセル神戸戦)を決めたけれども、最終的にはリーグ戦で5試合の出場に留まる。それでもチャレンジの意味は大きかったと佐藤は振り返る。

「FC東京のトップチームではもちろんマリノスに行って、よりチームでタスクをこなす重要性について考えたと思います。どちらかと言うと自由を与えたユース時代とは違う環境でプレーした時に『なぜ上手くいかないのか』、そういう課題と向き合えた移籍だったと推察します。いろんな規律があるなかで持ち味を出すだけでなく、自分の不得手な部分も意識しながらやっていくというプロのベースを学べたのではないでしょうか。J1ともなると、一人ひとりの役割の重みが相当なものです。そことも向き合えたというか、マリノスでの半年間で精神的にも逞しくなった印象があります」
 
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