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「なぜ自分は出られなかったのか」。負けず嫌いな久保建英を象徴するエピソード【東京五輪代表のルーツ探訪・前編】

カテゴリ:日本代表

白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

2021年07月21日

サッカーIQが非常に高く、中学生にして本質を見抜く

U-12ジュニアサッカー・ワールドチャレンジ2013では、バルサ優勝の立役者のひとりに。写真:(C)Getty Images

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 新たな環境に馴染むのも、そこまで時間がかからなかった。当時FC東京U-18の監督だった佐藤一樹もこう証言している。

「チームに合流して最初の数日は硬い様子でしたが、1週間も経たないうちに馴染んで“建英ワールド”を作っていました。先輩たちとコミュニケーションを取るのが得意というか、よくしゃべる(笑)。高校生の中に入ってプレーするわけですから最初はスピードや競り合いの部分で分の悪さはありましたが、そこもすぐに修正していました」

 ここでも仲間の存在は大きかった。「建英の周りはいつも明るかった」という佐藤の証言からもそれは分かるだろう。

「この先輩ならここまで踏み込んで大丈夫とか、そういう感じで建英はコミュニケーションを取っていました。それぞれのキャラクターによって接する手法を変えるといいますか、決して一方通行ではないから建英の周りはいつも明るかった。なんていうか、その中心にいる彼には華がありましたよね。周りも『おい、タケ』と呼んで、そこからいじったり、楽しく会話したり、良い雰囲気だったのをよく覚えています」

 コミュニケーション力以外では洞察力も備えていた。

「目の前で起きている事象の背景に何があるのか、そういうのを感じ取る能力はすごく高かった。練習でもこのトレーニングでは何を求められているか、それを理解したうえであえて裏をかくとか、いろんな発想を持っている選手でしたね。ひと言で建英は賢かったですよ」

 そう振り返る佐藤は久保とのコミュニケーションについて、こんなエピソードも教えてくれた。

「私は徐々にルール付けをするトレーニングが個人的に好きで、それをやると建英が『一樹さん、これは2タッチでいきます? オフサイドありにしますか?』とルールを提案してくる(笑)。だから、『タケ、それは次。ルールは少しずつ付け加えていくから、ちょっと待ってろ』と(笑)。そういうやり取りはありましたね」
 とにかく自分で考える。中学生にしてサッカーの本質を見抜いているからこそ、チームメイトにも遠慮なく指示を出す。

「建英は決められたルールの中に何か“抜け道”がないか考える子でした。さっきも言ったように、要は裏をかくということです。ルール通りではなく、そこに工夫を凝らす、それが建英です。練習ではそのトレーニングの意図が分からない選手たちにアドバイスしたり、(紅白戦では)『こういうポジショニングをすれば、もう少し楽にボールを動かせるじゃん』と具体的に指示したりしていました。ガムシャラにボールを追い続けるのではなくて、抜くところは抜く。そういう賢さがあって、サッカーIQはとても高いなと」

 そう褒め称える佐藤も、ユース在籍1年目から久保を絶対的なレギュラーにしたわけではない。例えば16年に大会得点王に輝いたクラブユース選手権(U-18)ではグループリーグから決勝までの7試合でいずれも久保は途中出場だった。その理由を佐藤は次のように述べている。

「90分間の試合に耐えうる総合的な体力と言えばいいんでしょうか、そういうものがまだ足りないように見えました。もちろん技術的には確かなレベルだったので、経験は積ませてやりたい。なので、途中出場という選択を。建英を怪我などで壊してしまっては元も子もない。そういう判断もあって、スタメンでは使いませんでした。まあ、建英は先発したかったと思いますよ。次の年のクラブユース選手権で本人も『昨年は頭から起用してもらえなかったので』という感じで話していましたから(笑)」

 16年のクラブユース選手権を制したあと、トップチームへ2種登録された久保は同年11月5日の長野戦(J3リーグ)でFC東京U-23の一員としてJリーグデビューを果たす。そして17年5月に開催されたU-20ワールドカップにも参戦するなどして逞しくなると、同年のクラブユース選手権では準々決勝から決勝までの3試合に先発。2つ年上の原大智(現アラベス)と2トップを組む形でチャンスを演出し、大会連覇に寄与するのだった。<文中敬称略>/後編に続く

取材・文●白鳥和洋(本誌編集長)

※サッカーダイジェスト2021年7月22日号から転載。

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