一昨年に夏のクラブユースで優勝、高円宮杯では準優勝の結果を残した鳥栖U-15で福井は主将としてチームを率いていた。アンカーでボールをさばき左右に展開する姿を見ていて、ピッチにひとり大人が混じっているかと錯覚させられたほどだ。そのまま進級したU-18でも中盤の底を任され、高い強度の中でも慌てることなくプレーしていた。その姿に改めて福井の凄みを感じたものだが、シーズン途中で田中監督は彼を左WGにコンバートする。

「さばくのがうまいのは分かっていたけど、動けないところがあった。それは中学校の時から言っていたし、彼も課題と思っていました。アンカーを続けたら彼のプレーエリアはすごく狭まってしまう。仕掛けたり味方に使われたりすることもそうですし、自分で持ってゴールを目指すことができればスケールも大きくなるなと」

　低い位置で奪われずに、さばく。それだけでチームに安心感は与えられるものの、ダイナミックな動きはなく決定的な仕事に絡むことは少ない。この部分を加えればさらに怖い選手になると確信した田中監督の一手が左WGだったのだが、見事にこれがハマった。

　頂点を獲った昨年のクラブユースでも関東の強豪相手に臆せず仕掛けゴール前まで侵入する場面が見られ、本人にも大きな自信につながった。

「サイドハーフで自信を持って仕掛ることを求められる中、けっこうそれができていて。チームを勝たせられる選手になりたいと思いました。展開力だけでなく、ゴールを目指して、相手にとって脅威になる選手に、と」
 

“中盤でさばくのがうまい選手”から“自ら仕掛けてゴールに向かえる選手”へと、この短い期間でプレースタイルが変容したのだ。今の福井はU-18年代では攻撃面での怖さが格段にある。アンカーの時に発揮していたポジション取りの妙とキープ力をより高い位置で発揮し、鳥栖U-18の攻撃の中心となっている。

　また、彼のサッカーに向き合う姿勢も成長に寄与していることは間違いない。福井の中学時代を見ていた鳥栖U-15の森惠佑監督は言う。

「うまくなるためにハングリーでした。彼は鳥栖に住んでいることもあって、練習場の飯田グラウンドに一番に来て、誰よりも先にアップをしてボールを蹴っていました。代表へ行ってからも、どこのレベルでやることになっても、ブレずにうまくなるために時間を使っていました」