「代表は監督が選ぶわけだし、なにを言ってもすべて言い訳になってしまう」
6月1日に発表された日本代表メンバーの中に『今野泰幸』の名前はなかった。
代表落選を受けて思うところはあるはずだが、想いをぐっと胸の奥に押し込んで言葉を紡ぐ。
「代表は監督が選ぶわけだし、選手はなにも言うことはない。俺らはピッチでやるしかない。なにを言ってもすべて言い訳になってしまうから」と。
だからといって、悲壮感があるわけではない。「自分はサッカーが巧くなりたいという強い気持ちを持って、これからも常に前進するだけです。今は代表のことは考えていないし、考えるべきでもないと思う」。
今回の代表チームについても言及する。
「素直に今回の代表は見る側として楽しみだし、応援したいとも思う。どういうサッカーをするのか、という興味もある。サッカーファンとして見たい」
さらなる高みを目指すうえで、自身の課題についても触れる。
「つなぎ役のところもそうだし、判断も遅い。ボールに絡む回数も少ない。伸ばさないといけない部分ばかり。ボランチは、まだまだ奥が深い」。また、“パスの距離”も意識しているという。「パスの距離がまだ短い。20、30、40メートルのボールを正確に蹴れて、判断良くフリーのところに出せれば、またプレーの質やチームへの貢献度も変わってくる。そういうことを考え出したらいくらでもある」。
鹿島戦では大きなミスもなく、質の高いパフォーマンスを披露した。しかし、本人は「パスを成功したとしてもミスかもしれない」と主張。あるプレーの“成功”が“最善”を意味するとは限らない、という意味だ。
「ミスはないと言っても、一番良い判断というのがある。たとえばビデオを見返して、プレッシャーが来ていると思ってバックパスしても、そこで前を向いてフリーな選手に付けられたら、そっちのほうが良い選択。パスを成功したとしてもミスかもしれない。攻撃のスピードを遅くしてしまったとか。それを考えたら、もっと上を目指せる」
ここで、三度目の「満足したら終わり」を初句に置き、力強くこう断言した。
「俺は満足していない。だから伸びしろがあると思う。できないからと言って落ち込むんじゃなくて、今はポジティブにサッカーを楽しみながらできている」
そして最後の言葉は――「良い感じっすよ」。
笑顔で残したひと言が、今野の心身状態を示している。今回は代表落選となったが、このまま進歩を続ければ、再び日の丸を背負う機会も訪れるはずだ。
取材・文●大木 勇(サッカーダイジェスト編集部)