中央に鎮座する遠藤が左右や縦にパスを入れ、リズムを作った。他選手の動きもよくなり、後半のラストはＡ代表に圧をかけられるようになった。それでも、A代表のように２人、３人と連携して攻撃することができず、得点の匂いを醸し出すには至らなかった。

　堂安律は、「なんとか１点とって士気を高めたかったんですけど、A代表は球際も強く、難しかった」と厳しい表情でそう振り返った。久保は、他の選手がA代表やチームメイトとの談笑に交じっている中、ひとりピッチに座り、不満気な表情を見せていた。3‐0の結果以上に何もさせてもらえなかったことに悔しさを露わにしていた。

　前半だけで終わった選手、途中出場で得点を期待されながらもパンチに欠けた選手。彼らは、どういう思いでピッチを去り、試合を終えたのだろうか。

　森保監督は、U-24日本代表の出来について「全体的に物足りない」と語った。

　チームの完成度の違いは仕方ないにしても球際の強さや身体の当たりなど局地戦でも負けており、スコアも内容も完敗だった。気になったのは、攻撃陣の迫力不足だ。

　田川亨介、前田大然は谷口彰吾らA代表の守備陣に脅威をまったく与えることができていなかった。林大地は「やってやろう」という気持ちは見えたが、意識が強すぎてやや空振りの様子だった。森保監督が攻撃陣にOAを加えなかったことは彼らへの信頼、期待感の表われでもある。A代表はここぞという時には、前線に駆け上がり、ボックス内に３、４人が飛び込んできた。鎌田大地、南野拓実は相手の隙を狙い、いつもシュートチャンスを狙っていた。その中で鎌田はゴールを決めている。

　翻って若い選手たちはどうだったか――。
 

　本格的なチーム作りはメンバーが決まってからも十分できる。

　ロンドン五輪の時も現地に入って、OAの吉田麻也を中心に新たな守備戦術を確認し、ベラルーシ戦とメキシコ戦の２試合で試した後、初戦のスペインに臨んだ。短い時間でも効率よく、最低限の決まり事を確認して、全員でやれるようになればチームとして機能するというのを彼らは見せてくれた。今回も18名の選手が発表された後、気持ちが整えば急速にチームはまとまっていくだろう。

　だが、この試合を含めた３試合は、生き残りを賭けたサバイバルだ。そう割り切っているならその意識を貫き、「違い」を見せてほしいと思う。特に攻撃陣は「自分が」という気持ちで行き切ってほしい。中途半端な意識やプレーからは、五輪代表の椅子も、いい結果も得られない。

取材・文●佐藤 俊（スポーツライター）

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