スポーツの文化を途切らせてはいけない
ただ、我々の努力だけではどうにもできないケースもあります。4月に発令された緊急事態宣言(対象は東京都、京都府、大阪府、兵庫県)がそう。Jリーグとしては2週間に一度のPCR検査も含め、やれるだけの感染対策はしてきました。NPB(日本野球機構)と協力して検証したデータのおかげもあって、スタジアムでクラスターは発生していません。でも、「人流抑制の目的でリモートマッチ(無観客試合)」と政府に命じられれば従うしかないのです。
実際のところ、「5000人の観客は入れたい」というお願いは政府にしていました。リモートマッチはいわば最終手段。できれば避けたいのが本音です。しかし、今回は緊急事態宣言が発令されてから次の試合開催まで時間的余裕もなかったので、リモートマッチを受け入れる以外に選択肢はありませんでした。
クラブ、ファン・サポーターのことを考えれば、対象の4都府県でのゴールデンウィーク期間中の試合はすべて延期という判断がベストかもしれません。ただ、そうなると、先ほども述べたように収拾がつかなくなるのです。
私はクラブスタッフも経験していますから、分かります。「リモートマッチなら日程をずらしてくれよ」という気持ちが。しかし、それを承知の上で我々が最優先すべきは日程の消化なのです。ここは絶対にブレません。緊急事態宣言が延長される、もしくはそのエリアが拡大される可能性も踏まえれば、リモートマッチでもやる。それが我々の出した結論でもあります。
実際のところ、「5000人の観客は入れたい」というお願いは政府にしていました。リモートマッチはいわば最終手段。できれば避けたいのが本音です。しかし、今回は緊急事態宣言が発令されてから次の試合開催まで時間的余裕もなかったので、リモートマッチを受け入れる以外に選択肢はありませんでした。
クラブ、ファン・サポーターのことを考えれば、対象の4都府県でのゴールデンウィーク期間中の試合はすべて延期という判断がベストかもしれません。ただ、そうなると、先ほども述べたように収拾がつかなくなるのです。
私はクラブスタッフも経験していますから、分かります。「リモートマッチなら日程をずらしてくれよ」という気持ちが。しかし、それを承知の上で我々が最優先すべきは日程の消化なのです。ここは絶対にブレません。緊急事態宣言が延長される、もしくはそのエリアが拡大される可能性も踏まえれば、リモートマッチでもやる。それが我々の出した結論でもあります。
コロナ禍に加え、今季はスケジュール調整のうえでJ1が20クラブになった難しさがあります。リーグ戦が34節から38節に増え、ルヴァンカップのグループステージ6節分、天皇杯の1試合分も加味すれば、それだけで45節分必要ですよね。そのうえ、ACLの日程変更もあったわけですから、正直、これ以上、大幅に動かすのは無理。それはまあ冗談としても、厳しい状況にあるのは事実です。ガンバ大阪の延期分が本来なら試合を入れないはずだった東京五輪期間中に設定せざるを得なかった点からも、理解できるでしょう。
正直、この先、どんな困難が待ち受けているかは分かりません。感染拡大の一途を辿れば、昨季のような中断もあり得ます。ですが、今は前向きに一つひとつの試合を終わらせていく。サッカーに限らず、スポーツの文化を途切らせてはいけません。たとえリモートマッチでもやり切ることが大事ということを、各方面に今後も働きかけていきたいです。
<プロフィール>
原 博実(はら・ひろみ)/1958年10月19日生まれ、栃木県出身。現役時代はFWで早稲田大、三菱重工などで活躍。日本代表歴(国際Aマッチ)は75試合・37得点。現役引退後、浦和、FC東京の監督を経て日本サッカー協会で技術委員長なども務めた。16年3月にJリーグの副理事長に就任し、現在に至る。
取材・構成●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)
※本稿は、サッカーダイジェスト6月10日号に掲載された「J’sリーダー理論」の内容を加筆したもの。
正直、この先、どんな困難が待ち受けているかは分かりません。感染拡大の一途を辿れば、昨季のような中断もあり得ます。ですが、今は前向きに一つひとつの試合を終わらせていく。サッカーに限らず、スポーツの文化を途切らせてはいけません。たとえリモートマッチでもやり切ることが大事ということを、各方面に今後も働きかけていきたいです。
<プロフィール>
原 博実(はら・ひろみ)/1958年10月19日生まれ、栃木県出身。現役時代はFWで早稲田大、三菱重工などで活躍。日本代表歴(国際Aマッチ)は75試合・37得点。現役引退後、浦和、FC東京の監督を経て日本サッカー協会で技術委員長なども務めた。16年3月にJリーグの副理事長に就任し、現在に至る。
取材・構成●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)
※本稿は、サッカーダイジェスト6月10日号に掲載された「J’sリーダー理論」の内容を加筆したもの。