G大阪戦は「チャレンジに手応えを感じた」
攻撃はどうか。当初はボールを保持しても周りを探すシーンが多く、結果としてボール保持率は30パーセント台に低迷。チャンスの構築数自体も少なく、逆に押し込まれてピンチにさらされることも少なくなかった。だが、それも試合を経験していくことで修正。第4節・鹿島アントラーズ戦(1-1)の後半は狙いとしていたショートカウンターで3つの決定機を創出し、第5節・清水エスパルス戦(1-0)以降は支配率50パーセント台を回復。昨年、支配率50パーセント台を記録した試合では2勝6分7敗と勝てなかったのに、今季は2勝2分と負けていないことも成長だ。
清水戦ではセットプレーで逃げ切り、先制された大分戦では強力な前線からの圧力を利して3得点を奪った。4-4-2から4-1-2-3にシステムを変えたG大阪戦では特に後半、ジュニオール・サントスの破壊力と森島司の躍動が目につき、前線からのプレッシャーが機能していた80分くらいまでG大阪にまともなチャンスを与えなかった。G大阪がコンディションに問題を抱えていたとはいえ、「チャレンジに手応えを感じた」と指揮官も頷いた。
決してスムーズな攻撃が実践されているわけでもなく、華やかさもまだない。ただ、指揮官がシーズン前に掲げていた「BOX IN」については、例えば大分戦の同点ゴールでは5人がクロスに入り、決めたのはボランチの青山敏弘。G大阪戦でも両サイドバックがBOXの中(ペナルティエリア内)に入ってくるなど、明確に意識は改善されている。
「変幻自在の可変型」(城福監督)の攻撃についても、例えば大分戦ではFWの鮎川峻が中盤におりて相手にプレスをかけ、SBの今津佑太がボールをカットして中央をドリブルで運び、スルーパスを送る。そして、ゴールを決めたのがボランチの川辺駿だった。
これまでチームが奪った11得点中、複数ゴールを決めたのはFWジュニオール・サントス(2点)だけで、あとはすべて違う選手というデータも、トータルフットボール的だ。
清水戦ではセットプレーで逃げ切り、先制された大分戦では強力な前線からの圧力を利して3得点を奪った。4-4-2から4-1-2-3にシステムを変えたG大阪戦では特に後半、ジュニオール・サントスの破壊力と森島司の躍動が目につき、前線からのプレッシャーが機能していた80分くらいまでG大阪にまともなチャンスを与えなかった。G大阪がコンディションに問題を抱えていたとはいえ、「チャレンジに手応えを感じた」と指揮官も頷いた。
決してスムーズな攻撃が実践されているわけでもなく、華やかさもまだない。ただ、指揮官がシーズン前に掲げていた「BOX IN」については、例えば大分戦の同点ゴールでは5人がクロスに入り、決めたのはボランチの青山敏弘。G大阪戦でも両サイドバックがBOXの中(ペナルティエリア内)に入ってくるなど、明確に意識は改善されている。
「変幻自在の可変型」(城福監督)の攻撃についても、例えば大分戦ではFWの鮎川峻が中盤におりて相手にプレスをかけ、SBの今津佑太がボールをカットして中央をドリブルで運び、スルーパスを送る。そして、ゴールを決めたのがボランチの川辺駿だった。
これまでチームが奪った11得点中、複数ゴールを決めたのはFWジュニオール・サントス(2点)だけで、あとはすべて違う選手というデータも、トータルフットボール的だ。
機能性は十分とまではいかないが、できる時間は少しずつ増幅。浅野雄也も「右肩上がりだと思います」と手応えを感じている。もちろん精度に問題を抱えていること、ジュニオール・サントスがまだ完全ではなく、期待の高い浅野や森島の得点数も物足りない。
しかし、それらを伸びしろと捉えれば、楽しみも増える。何より、新システムの機能性がまだ発展途上のなかでも、開幕以来リーグ7戦負けなし。しかも「負けなくてよかった」ではなく「勝ち切れなかった」という印象を与えていることは、逆にポジティブだ。
0-5と大敗を喫したルヴァンカップの横浜戦では、先に決定機をつかんだのは広島だった。PA内で放たれた鮎川峻や柴﨑晃誠のシュートが決まっていれば、また先制点をとられたあとの長沼洋一の決定機をネットに叩き込むことができていれば、状況はまったく違う事態になっていたと感じさせる試合だった。
3月7日のリーグ戦の時に流れの中からつくれなかった好機が、同27日の二度目の対戦ではいくつもできるようになっていたわけで、横浜との違いは決めるか決めないか。もちろん、サッカーにおいてはそこが雲泥の差を生むのだが、リーグ戦の時に大きかった内容の差が、結果とは裏腹に詰まっていたことも事実だ。
前代未聞といっていい公式戦17連戦がスタートし、公式戦で課題の抽出と修正を行ないながらチーム力を高めていく難しい作業が待っている。選手層が厚くない広島にとっては厳しい状況が続くが、成長への大いなる機会。新システムが効率よく稼働し、ジュニオール・サントスらのタレントが自身の能力を最大限に発揮できるようになった時、城福監督が言うところの「違う景色」を身近に感じることができるはずだ。
取材・文●中野和也(紫熊倶楽部)
しかし、それらを伸びしろと捉えれば、楽しみも増える。何より、新システムの機能性がまだ発展途上のなかでも、開幕以来リーグ7戦負けなし。しかも「負けなくてよかった」ではなく「勝ち切れなかった」という印象を与えていることは、逆にポジティブだ。
0-5と大敗を喫したルヴァンカップの横浜戦では、先に決定機をつかんだのは広島だった。PA内で放たれた鮎川峻や柴﨑晃誠のシュートが決まっていれば、また先制点をとられたあとの長沼洋一の決定機をネットに叩き込むことができていれば、状況はまったく違う事態になっていたと感じさせる試合だった。
3月7日のリーグ戦の時に流れの中からつくれなかった好機が、同27日の二度目の対戦ではいくつもできるようになっていたわけで、横浜との違いは決めるか決めないか。もちろん、サッカーにおいてはそこが雲泥の差を生むのだが、リーグ戦の時に大きかった内容の差が、結果とは裏腹に詰まっていたことも事実だ。
前代未聞といっていい公式戦17連戦がスタートし、公式戦で課題の抽出と修正を行ないながらチーム力を高めていく難しい作業が待っている。選手層が厚くない広島にとっては厳しい状況が続くが、成長への大いなる機会。新システムが効率よく稼働し、ジュニオール・サントスらのタレントが自身の能力を最大限に発揮できるようになった時、城福監督が言うところの「違う景色」を身近に感じることができるはずだ。
取材・文●中野和也(紫熊倶楽部)