リーグ中断の意思決定も私の独断ではない
正直、私はお昼に何を食べるかも即決できない人間です。リーグ中断の意思決定も、私の独断ではありません。半径10メートルにいる方々、全クラブの社長たちとのウェブ会議を何度も重ねたうえでの結論です。Jリーグの理事会や実行委員会の方々、普段はライバル関係にあるクラブの社長が一致団結して、私を後押ししてくれました。その結束力たるや、出色でしたよね。素直に「Jリーグに関わる人たちのパワーは凄い」と感じました。
もっとも、意見が分かれるシチュエーションもあります。再開時期を決定する際は、推進派もいれば慎重派もいました。地域によって感染症の拡大状況や危機感が違うので、それこそ真っ二つに分かれました。J2とJ3は6月下旬、J1は7月初旬再開との決定に至るまでは、葛藤に苦しむ自分が常にいました。
難しい意思決定で思い出されるのは、2014年の無観客試合(3月23日の浦和対清水戦)です。私がチェアマンに就任して1週間が経った頃、「JAPANESE ONLY」という横断幕の記載内容が差別と受け取れる事案があって、その裁定として下した処分が無観客試合でした。
世間でも大騒ぎになって、もの凄い数の記者に囲まれましたが、どう回答すべきか迷う部分もありました。当時はFIFAのルールもJリーグの規約も完全には頭に入っておらず、ただ緊張しているわけですよ。でも、その緊張が後に自分の成長に繋がります。
もっとも、意見が分かれるシチュエーションもあります。再開時期を決定する際は、推進派もいれば慎重派もいました。地域によって感染症の拡大状況や危機感が違うので、それこそ真っ二つに分かれました。J2とJ3は6月下旬、J1は7月初旬再開との決定に至るまでは、葛藤に苦しむ自分が常にいました。
難しい意思決定で思い出されるのは、2014年の無観客試合(3月23日の浦和対清水戦)です。私がチェアマンに就任して1週間が経った頃、「JAPANESE ONLY」という横断幕の記載内容が差別と受け取れる事案があって、その裁定として下した処分が無観客試合でした。
世間でも大騒ぎになって、もの凄い数の記者に囲まれましたが、どう回答すべきか迷う部分もありました。当時はFIFAのルールもJリーグの規約も完全には頭に入っておらず、ただ緊張しているわけですよ。でも、その緊張が後に自分の成長に繋がります。
緊張するということは余裕がない、別の言い方をすれば、まだ人間として未成熟となります。私の思考パターンとして、自分ができること、絶対に無理なことには緊張しません。緊張するのは“できるかできないか”の瀬戸際にある場合。緊張するような難しい場面を乗り越えるとリーダーとして成長できる部分がある、要するに何かを決断する際の判断基準のレベルが上がるということです。
できるかできないかの局面、これは別の言い方をすれば大切なものが手に入るかどうかの局面なのです。大の大人が転職活動時の面接で緊張するのも、それをパスできれば“大切な何かが手に入る”からですよね。緊張の先には大切なものに気づけるチャンスがあるはずで、だからこそ緊張する場面から逃げずに乗り越え、また次の緊張に立ち向かうようにしています。
私がアピールしたいのは、Jリーグは無限の可能性を秘めているということです。プレミアリーグやブンデスリーガ、ラ・リーガなどがあるヨーロッパ各国でも、人口が1億人いる国はロシア以外にないんですよ。さらに言えば、日本の経済力はアメリカ、中国に次いで世界3位。人が育つ環境、教育水準、デジタル技術も相当いい日本で、リーダーが正しくサッカー界を牽引できれば、Jリーグもいずれ世界ナンバーワンのリーグになれるはずです。
Jリーグは今、アカデミー世代の育成に大きな投資をし始めています。久保建英選手のようなプレーヤーを、例えば50クラブから2、3人ずつ輩出できたら凄いことになりますよね。決して不可能ではないんですよ、ちゃんとやれば。コロナ禍で大変ですが、世界のトップリーグに伍して並べるくらいのポテンシャルを秘めているので、是非Jリーグに期待してほしいです。世界に通用しそうなクラブも育ってきているので、その点でも注目してほしいです。
<プロフィール>
村井満(むらい・みつる)/1959年8月2日生まれ、埼玉県出身。浦和高在学中はGKとして冬の選手権予選にも出場した。早稲田大卒業後、リクルートに入社。そこで執行役員を務めるなどして、14年1月31日、大東和美氏のあとを受けて第5代Jリーグチェアマンに就任し、現在に至る。
取材・構成●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)
できるかできないかの局面、これは別の言い方をすれば大切なものが手に入るかどうかの局面なのです。大の大人が転職活動時の面接で緊張するのも、それをパスできれば“大切な何かが手に入る”からですよね。緊張の先には大切なものに気づけるチャンスがあるはずで、だからこそ緊張する場面から逃げずに乗り越え、また次の緊張に立ち向かうようにしています。
私がアピールしたいのは、Jリーグは無限の可能性を秘めているということです。プレミアリーグやブンデスリーガ、ラ・リーガなどがあるヨーロッパ各国でも、人口が1億人いる国はロシア以外にないんですよ。さらに言えば、日本の経済力はアメリカ、中国に次いで世界3位。人が育つ環境、教育水準、デジタル技術も相当いい日本で、リーダーが正しくサッカー界を牽引できれば、Jリーグもいずれ世界ナンバーワンのリーグになれるはずです。
Jリーグは今、アカデミー世代の育成に大きな投資をし始めています。久保建英選手のようなプレーヤーを、例えば50クラブから2、3人ずつ輩出できたら凄いことになりますよね。決して不可能ではないんですよ、ちゃんとやれば。コロナ禍で大変ですが、世界のトップリーグに伍して並べるくらいのポテンシャルを秘めているので、是非Jリーグに期待してほしいです。世界に通用しそうなクラブも育ってきているので、その点でも注目してほしいです。
<プロフィール>
村井満(むらい・みつる)/1959年8月2日生まれ、埼玉県出身。浦和高在学中はGKとして冬の選手権予選にも出場した。早稲田大卒業後、リクルートに入社。そこで執行役員を務めるなどして、14年1月31日、大東和美氏のあとを受けて第5代Jリーグチェアマンに就任し、現在に至る。
取材・構成●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)