鹿島のレジェンドたちから直接指導を受け開眼。「なんでもできるFWになりたい」
ユースに昇格をすると、両親への感謝の気持ちだけではなく、兄の躍動に心を動かされた。
「トップに上がって出番がなくて、金沢に移籍する姿を見て、正直、『お兄ちゃん何やっているんだよ!』という気持ちでした。でも、そこからどんどんゴールを重ねて、J1に這い上がっていった姿を見て、もう尊敬しかなかった。ただ勝ちたいと思っていて、『お兄ちゃんと俺は違うから、別のプレーで活躍をしたい』とどこか素直じゃなかった自分から、『どうやったらお兄ちゃんのいいところを盗めるかな』という考えに変わりました。僕の得意とする前線で身体を張ってボールを収めたり、展開したりするプレーに加えて、お兄ちゃんが得意とする前線でのスプリントや裏抜けなどを見て学んで自分のものにする。僕には偉大な最高のお手本がいるのは本当にありがたいことですよね」
意固地だった自分が消え、素直な気持ちで兄を見るようになったことで、彼の視野は大きく広がった。苦手だった裏抜けや連続したスプリントにも意欲的に取り組むようになったことで、プレーに柔軟性が出てきた。
そして2021年、彼は4月から最高学年となる。兄・裕暉は高2からプレミアEASTで出番を掴み、高3時には同リーグで優勝し、得点ランキングも2位の12ゴールをマーク。トップ昇格を手にしている。カテゴリーでは1つ下のプリンスリーグ関東での1年となるが、プレミアの次にレベルが高いとされるプリンス関東で活躍をすれば、将来の道が大きく切り開かれることは間違いない。
「昨年はプリンスでなかなか出られなくて悔しかった。お兄ちゃんと比べたら出遅れているかもしれないけど、ここからもっと努力を重ねて成長をしたい」
高校最後の1年に意気込む将吾にとって、兄だけでなく、柳沢敦監督と小笠原満男コーチの存在は大きなものとなっている。2人とも言わずと知れた日本トップクラスのストライカーとボランチであり、鹿島のレジェンド。2人が発する言葉を一言一句聞き逃すまいと耳を傾けている。
「現役時代は動き出しが超一流だと思っていて、アドバイスは物凄く具体的で、例えば味方が前を向いたときに、他の選手と動きが被ってしまうと、僕はそこからどうしていいか分からずに固まっていたんです。それを柳沢監督は動き直しのポイントや動き出すまでの駆け引き、ポジショニングを細かく教えてくれる。自分にないものを得られるチャンスだと思っています。満男さんはボランチの選手にアドバイスをするのですが、それが物凄く勉強になるんです。例えば『ボランチはボールをもらったらすぐに顔をあげろ』と言っていて、その指示が物凄く的確。なので、僕もその指示を聞いて、ボランチの選手の顔が上がった瞬間を見逃さずに動き出すようにしていたら、今まで多かった無駄走りが減って、いいボールが来るようになったんです。2人が言っていることを頭の中でリンクさせると、たくさんのヒントが転がっていて、本当に頭の中が整理をされていく。これからも話を聞いて、お兄ちゃんのプレーと共にどんどんリンクをさせて、なんでもできるFWになりたいです」
準優勝したサニックス杯では3ゴールを挙げたが、まだまだこの結果で満足をしていない。兄のようにもっとチームを勝利に導くゴールや、苦しい時にチームを救うゴールを重ねないと評価されないし、周りからの信頼を掴めない。プロの世界で苦しみ、結果を出して這い上がってきた兄の姿を誰よりも身近で見てきたからこそ、彼はこの現実をしっかりと理解している。
「チームの中で一番活躍したいんです。相手はもちろん、仲間にも負けたくない。そのためにはこれまでのように周りの言葉に耳を傾けて、他の選手のいいところを学びながら取り組んでいかないといけない。もっとなんでもできるFWになりたい」
真摯に直向きに取り組む者の未来は明るい。いつか兄と同じステージに立ち、兄以上の活躍をすることを目標にして、垣田将吾は九州の地から勝負の年のスタートを切った。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
「トップに上がって出番がなくて、金沢に移籍する姿を見て、正直、『お兄ちゃん何やっているんだよ!』という気持ちでした。でも、そこからどんどんゴールを重ねて、J1に這い上がっていった姿を見て、もう尊敬しかなかった。ただ勝ちたいと思っていて、『お兄ちゃんと俺は違うから、別のプレーで活躍をしたい』とどこか素直じゃなかった自分から、『どうやったらお兄ちゃんのいいところを盗めるかな』という考えに変わりました。僕の得意とする前線で身体を張ってボールを収めたり、展開したりするプレーに加えて、お兄ちゃんが得意とする前線でのスプリントや裏抜けなどを見て学んで自分のものにする。僕には偉大な最高のお手本がいるのは本当にありがたいことですよね」
意固地だった自分が消え、素直な気持ちで兄を見るようになったことで、彼の視野は大きく広がった。苦手だった裏抜けや連続したスプリントにも意欲的に取り組むようになったことで、プレーに柔軟性が出てきた。
そして2021年、彼は4月から最高学年となる。兄・裕暉は高2からプレミアEASTで出番を掴み、高3時には同リーグで優勝し、得点ランキングも2位の12ゴールをマーク。トップ昇格を手にしている。カテゴリーでは1つ下のプリンスリーグ関東での1年となるが、プレミアの次にレベルが高いとされるプリンス関東で活躍をすれば、将来の道が大きく切り開かれることは間違いない。
「昨年はプリンスでなかなか出られなくて悔しかった。お兄ちゃんと比べたら出遅れているかもしれないけど、ここからもっと努力を重ねて成長をしたい」
高校最後の1年に意気込む将吾にとって、兄だけでなく、柳沢敦監督と小笠原満男コーチの存在は大きなものとなっている。2人とも言わずと知れた日本トップクラスのストライカーとボランチであり、鹿島のレジェンド。2人が発する言葉を一言一句聞き逃すまいと耳を傾けている。
「現役時代は動き出しが超一流だと思っていて、アドバイスは物凄く具体的で、例えば味方が前を向いたときに、他の選手と動きが被ってしまうと、僕はそこからどうしていいか分からずに固まっていたんです。それを柳沢監督は動き直しのポイントや動き出すまでの駆け引き、ポジショニングを細かく教えてくれる。自分にないものを得られるチャンスだと思っています。満男さんはボランチの選手にアドバイスをするのですが、それが物凄く勉強になるんです。例えば『ボランチはボールをもらったらすぐに顔をあげろ』と言っていて、その指示が物凄く的確。なので、僕もその指示を聞いて、ボランチの選手の顔が上がった瞬間を見逃さずに動き出すようにしていたら、今まで多かった無駄走りが減って、いいボールが来るようになったんです。2人が言っていることを頭の中でリンクさせると、たくさんのヒントが転がっていて、本当に頭の中が整理をされていく。これからも話を聞いて、お兄ちゃんのプレーと共にどんどんリンクをさせて、なんでもできるFWになりたいです」
準優勝したサニックス杯では3ゴールを挙げたが、まだまだこの結果で満足をしていない。兄のようにもっとチームを勝利に導くゴールや、苦しい時にチームを救うゴールを重ねないと評価されないし、周りからの信頼を掴めない。プロの世界で苦しみ、結果を出して這い上がってきた兄の姿を誰よりも身近で見てきたからこそ、彼はこの現実をしっかりと理解している。
「チームの中で一番活躍したいんです。相手はもちろん、仲間にも負けたくない。そのためにはこれまでのように周りの言葉に耳を傾けて、他の選手のいいところを学びながら取り組んでいかないといけない。もっとなんでもできるFWになりたい」
真摯に直向きに取り組む者の未来は明るい。いつか兄と同じステージに立ち、兄以上の活躍をすることを目標にして、垣田将吾は九州の地から勝負の年のスタートを切った。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)