会長とオーナーは孤立し始めている
オーナーのマッコートも反感を買っている。暴力沙汰は決して正当化できないが、怒れるサポーターたちを「極小ごろつきグループ」と侮蔑したり、練習場への乱入をアメリカのトランプ前大統領を支持者たちが議事堂に乱入した事件になぞらえたりと、ヒンシュクを買っている。このことからも、ものの見方も政治文化も、マルセイユとフランスからかけ離れているのは明らかだ。
乱入したサポーターの横断幕には、「タピ、早く戻って」のスローガンがあった。ベルナール・タピは、パリ郊外出身にもかかわらず、マルセイユ民衆の心を知り、クラブをチャンピオンズ・リーグ優勝に導いたレジェンド会長で、現在は癌に冒されて壮絶な闘いをしている。マルセイユではいまも「ボス」と崇められている人物だ。
そのタピもあの蜂起以来、病を押してテレビ・ラジオに出演、痩せた身体からかすれた声を振り絞り、「今回は無性に悲しくなった。コロナで大変ないまだからこそ、双方が力を合わせなければいけない」と訴えていた。だがついに2日夕、「ジャック=アンリ・エローはマルセイユのようなクラブを率いるには適していない」とタックルを食らわせている。
クラブ内でも孤立がひしひしと感じられ、メディアでは「エロー会長は弱体化せざるを得ない」との見方と、「マッコートがついている以上、解任はありえない」との見方に真っ二つ。果たしてオーナーの信任だけでどこまで行けるのか。言葉は悪いが「虎の威を借る狐」のようにも見えてくる。
乱入したサポーターの横断幕には、「タピ、早く戻って」のスローガンがあった。ベルナール・タピは、パリ郊外出身にもかかわらず、マルセイユ民衆の心を知り、クラブをチャンピオンズ・リーグ優勝に導いたレジェンド会長で、現在は癌に冒されて壮絶な闘いをしている。マルセイユではいまも「ボス」と崇められている人物だ。
そのタピもあの蜂起以来、病を押してテレビ・ラジオに出演、痩せた身体からかすれた声を振り絞り、「今回は無性に悲しくなった。コロナで大変ないまだからこそ、双方が力を合わせなければいけない」と訴えていた。だがついに2日夕、「ジャック=アンリ・エローはマルセイユのようなクラブを率いるには適していない」とタックルを食らわせている。
クラブ内でも孤立がひしひしと感じられ、メディアでは「エロー会長は弱体化せざるを得ない」との見方と、「マッコートがついている以上、解任はありえない」との見方に真っ二つ。果たしてオーナーの信任だけでどこまで行けるのか。言葉は悪いが「虎の威を借る狐」のようにも見えてくる。
ただ、監督が去り、会長が孤立し始めているクラブを取り巻く噂話は盛んになってきた。まず、「ルイス・カンポスがマルセイユに来ている」との噂も猛スピードで流れた。「フットボール・ディレクター」のパブロ・ロンゴリアが出て行けば、モナコやリールを高みに導いたカンポスが後継になれるのでは、という希望的憶測である。
2日夕には、元マルセイユ監督で、ラジオの顔になっているローラン・クルビスが、「どこのクラブから請われようと監督になる気は絶対にないが、マルセイユだけは別だ」と意味深長な発言をし、「エロー会長とクルビスでうまくいくとは思えない」と大いに失笑を買った。当面は育成センター責任者のナセル・ラルゲがベンチ入りする予定だが、後継監督に誰を招集できるのかさえ、3日朝の現時点では見当もつかない状態になっている。
ちなみに、ヴィラス・ボアス監督が辞任する意思を知っていたのは、キャプテンのステーブ・マンダンダだけだったそうだ。酒井宏樹も長友佑都も、この間さぞ驚愕の連続だったに違いない。
そもそも、この解雇通知ですら、ファンに失笑されている。「自分から辞任すると言った者に、(解雇通告の前段階にあたる)出入り禁止措置を言い渡すなんて、聞いたことがない」とクラブの姿勢を大笑いしている。監督は「カネなど要らない、ただ出て行く」と言っているのだ。それなのに彼らは「ディシプリンの手続きを経て、アンドレ・ヴィラス=ボアスに対し制裁措置が下されるだろう」とのコミュニケを発表したのだから。
やはり、「エロー会長下のマルセイユは支離滅裂になっている」(L’EQUIPEのエティエンヌ・モワティ記者)のかもしれない。だが、それでも選手たちは、迫りくる試合で戦わねばならない。このクラブは、どこかの富豪のためではなく、マルセイユ民衆がつくった、マルセイユ人のためのクラブなのだから。
取材・文●結城麻里
text by Marie YUUKI
2日夕には、元マルセイユ監督で、ラジオの顔になっているローラン・クルビスが、「どこのクラブから請われようと監督になる気は絶対にないが、マルセイユだけは別だ」と意味深長な発言をし、「エロー会長とクルビスでうまくいくとは思えない」と大いに失笑を買った。当面は育成センター責任者のナセル・ラルゲがベンチ入りする予定だが、後継監督に誰を招集できるのかさえ、3日朝の現時点では見当もつかない状態になっている。
ちなみに、ヴィラス・ボアス監督が辞任する意思を知っていたのは、キャプテンのステーブ・マンダンダだけだったそうだ。酒井宏樹も長友佑都も、この間さぞ驚愕の連続だったに違いない。
そもそも、この解雇通知ですら、ファンに失笑されている。「自分から辞任すると言った者に、(解雇通告の前段階にあたる)出入り禁止措置を言い渡すなんて、聞いたことがない」とクラブの姿勢を大笑いしている。監督は「カネなど要らない、ただ出て行く」と言っているのだ。それなのに彼らは「ディシプリンの手続きを経て、アンドレ・ヴィラス=ボアスに対し制裁措置が下されるだろう」とのコミュニケを発表したのだから。
やはり、「エロー会長下のマルセイユは支離滅裂になっている」(L’EQUIPEのエティエンヌ・モワティ記者)のかもしれない。だが、それでも選手たちは、迫りくる試合で戦わねばならない。このクラブは、どこかの富豪のためではなく、マルセイユ民衆がつくった、マルセイユ人のためのクラブなのだから。
取材・文●結城麻里
text by Marie YUUKI