王者の存在を薄くしてしまった、“神様”の信じられない蛮行。
ヴェルディが初代年間王者に輝いた試合。その戦い方は、頂点に立つに相応しいものであり、主役として全ての注目を集めるはずだったが、試合後、人々の視線は敗者であるアントラーズの英雄に注がれた。
80分、ヴェルディのパウロが倒されてPKを得る。前述の通り、それはオブストラクションにも見え、間接FKが妥当と思われるものだった。当然、アントラーズの選手は納得がいかない。時間的にも、ここでの失点は敗北を決するものとなるからだ。
そして、PKキッカーのカズが助走に入った瞬間、ジーコがペナルティエリアに侵入。ボールにツバを吐きかけたのだ。この極めつけの非紳士的行為に対し、高田主審はジーコの頭上にこの試合2枚目のイエローカードを突きつけた。そしてアントラーズは、「あれでキレてしまった」(宮本監督)。
――試合後、記者会見場に現われた川淵チェアマンは、以下のように試合の印象を語った。
「シーズンの最後を飾るに相応しいゲームだったと思う。しかしながら、それも80分までだった」
川淵チェアマンと同じく、本誌も残念な気持ちでいっぱいである。ジーコに対する憤りでいっぱいである。いったい彼は、何のためにツバを吐いたのだろう。レッドカードを突きつけられた時、何を思って拍手したのだろう。
「私はジーコに憧れ、ジーコを目ざしてプレーしてきた。そのジーコが、なぜあんな態度を取るのか。それが悲しい」
ジーコに憧れ、彼を目ざしてプレーしているのは、コメントの主であるビスマルクだけではない。彼は何を理由にヴェルディの選手を挑発したのだろう。
「選手には『忍』の一文字だと言った。簡単にゴールはできない。だからジックリ、ジックリといかなければ、と言った」
試合後、宮本監督はこう語った。警告の枚数こそ第1戦と同じだが、シビレを切らしてラフプレーを連発した一週間前に比べれば、アントラーズはフェアに戦ったと言える。
だが、ジーコだけは我慢できなかった。ペナルティエリア付近でのファウルを、ことごとく取ってもらえなかった不満はあろう。アドバンテージがヴェルディ優位に働く不運もあった。
だが、あんな醜い行為はしてほしくなかった。世界に名を馳せたジーコだけに、ファンをガッカリさせるようなことはしてほしくなかった。結果的に、彼の信じられない行為はチームメイトの健闘をフイにしてしまった。そして、2試合を通じて優勝に値するプレーを見せたヴェルディの素晴らしさをも、希薄なものにしてしまっている。――
この行為に対しては、本誌の論客もそれぞれ苦言を呈した。セルジオ越後氏も今なお続くコーナー「天国と地獄」(当時第14回)のなかでストレートに語っている。
――「アントラーズのフロントの人、誰かジーコに鈴をつけろよ。いい加減、あんなやりたい放題を許してちゃいけない」「ボクがジーコやアルシンドを叩くのは、彼らが完全に我を失っているからなんだ。試合前から、『敵は11人じゃない。審判を含めた14人が敵だ』なんて言ってるんだからね。ああなったら、試合の運命は8割方決まってしまう」――
論客だけでなく、日本サッカーの重鎮たちをも激怒させた、後の日本代表監督。その行為が“蛮行”だったのは間違いないが、一方で「神様」「英雄」と崇められたクールな偉人が、人間らしさを垣間見せた瞬間でもあった。
80分、ヴェルディのパウロが倒されてPKを得る。前述の通り、それはオブストラクションにも見え、間接FKが妥当と思われるものだった。当然、アントラーズの選手は納得がいかない。時間的にも、ここでの失点は敗北を決するものとなるからだ。
そして、PKキッカーのカズが助走に入った瞬間、ジーコがペナルティエリアに侵入。ボールにツバを吐きかけたのだ。この極めつけの非紳士的行為に対し、高田主審はジーコの頭上にこの試合2枚目のイエローカードを突きつけた。そしてアントラーズは、「あれでキレてしまった」(宮本監督)。
――試合後、記者会見場に現われた川淵チェアマンは、以下のように試合の印象を語った。
「シーズンの最後を飾るに相応しいゲームだったと思う。しかしながら、それも80分までだった」
川淵チェアマンと同じく、本誌も残念な気持ちでいっぱいである。ジーコに対する憤りでいっぱいである。いったい彼は、何のためにツバを吐いたのだろう。レッドカードを突きつけられた時、何を思って拍手したのだろう。
「私はジーコに憧れ、ジーコを目ざしてプレーしてきた。そのジーコが、なぜあんな態度を取るのか。それが悲しい」
ジーコに憧れ、彼を目ざしてプレーしているのは、コメントの主であるビスマルクだけではない。彼は何を理由にヴェルディの選手を挑発したのだろう。
「選手には『忍』の一文字だと言った。簡単にゴールはできない。だからジックリ、ジックリといかなければ、と言った」
試合後、宮本監督はこう語った。警告の枚数こそ第1戦と同じだが、シビレを切らしてラフプレーを連発した一週間前に比べれば、アントラーズはフェアに戦ったと言える。
だが、ジーコだけは我慢できなかった。ペナルティエリア付近でのファウルを、ことごとく取ってもらえなかった不満はあろう。アドバンテージがヴェルディ優位に働く不運もあった。
だが、あんな醜い行為はしてほしくなかった。世界に名を馳せたジーコだけに、ファンをガッカリさせるようなことはしてほしくなかった。結果的に、彼の信じられない行為はチームメイトの健闘をフイにしてしまった。そして、2試合を通じて優勝に値するプレーを見せたヴェルディの素晴らしさをも、希薄なものにしてしまっている。――
この行為に対しては、本誌の論客もそれぞれ苦言を呈した。セルジオ越後氏も今なお続くコーナー「天国と地獄」(当時第14回)のなかでストレートに語っている。
――「アントラーズのフロントの人、誰かジーコに鈴をつけろよ。いい加減、あんなやりたい放題を許してちゃいけない」「ボクがジーコやアルシンドを叩くのは、彼らが完全に我を失っているからなんだ。試合前から、『敵は11人じゃない。審判を含めた14人が敵だ』なんて言ってるんだからね。ああなったら、試合の運命は8割方決まってしまう」――
論客だけでなく、日本サッカーの重鎮たちをも激怒させた、後の日本代表監督。その行為が“蛮行”だったのは間違いないが、一方で「神様」「英雄」と崇められたクールな偉人が、人間らしさを垣間見せた瞬間でもあった。