そのたびにリヨンのジャン＝ミシェル・オラス会長も、「これはオランピック・リヨネとその選手たちへの当てつけだ」と指弾。混乱を受けて監督は２月に、「私の言葉が何人かを傷つけたことは知っている。彼女たちに謝罪したい」と矛を収めたかにみえた。

　だが『L’EQUIPE』によれば、この２月の合宿で選手たちは「クーデター」を試みたという。ディアークル監督は何とかこれを潰したものの、一部選手たちとの面談は熾烈なやりとりになり、２人の選手が泣きじゃくりながら出てきたとも言われている。

　日本代表主将の熊谷紗希も所属するリヨンは、男子で言えば全盛期のバルセロナ。欧州ではほとんど敵なしの常勝軍団だ。クラブでは選手の権力も絶大で、オラス会長は彼女たちの意向をしっかり汲みながらマネージメントし、厳しすぎる監督も軟弱すぎる監督もその座を追われてきた。だがディアークル代表監督は、厳格なマネージメントと冷淡なコミュニケーションで“出る杭”を打ち、リヨン選手たちの反発を招いた。

　もっとも、その真意をめぐっては別の憶測も流れている。
 

　ディアークル監督は2014年にリヨン女子を率いたいと志願したが、相手にされなかったというのだ。やがてディアークル監督が男子クレルモンの監督に就任、男子を率いる初の女性監督として脚光を浴びた。

　すると、今度はリヨン側が女子チーム監督に招聘を打診。だがディアークル監督はこれを一蹴したという。もっともリヨン関係者は「覚えがない話だし、本当だとしてもそんな風に根にもつのは残念なことだ」と語る。一方のディアークル監督は沈黙を守っている。

　また、女子代表監督の座を狙う面々がいる、との見方もある。とくにディアークル監督は、「私がジェラシーを買うポストに就いていることはわかっている」と表現して牽制した。

　2019年ワールドカップがフランスに女子フットボール熱をもたらしただけに、今回の激しい対立劇は失望をもたらしている。

　男性ジャーナリストたちも「暴力的だな」（L’EQUIPEのギヨーム・デュフィ記者）と驚愕気味。「嫌な気持ちになる。ディアークルが素晴らしい監督だとは言わないが、リヨン選手たちも、代表はクラブとは別の論理で動いていると理解すべき」（テレビジャーナリストのジョヴァンニ・カスタルディ記者）という指摘も出ている。

　もっともディアークル監督はコロナウイルスに感染してしまい、今回の10月合宿も試合も遠隔管理。監督不在だったＥＵＲＯ予選北マケドニア戦（23日）では、ルソメールが４ゴールを叩き込み、11－０の大勝を飾った。これをL’EQUIPEのベルナール・リオンス記者は、「監督のために大量得点を捧げたんだねえ」と思わず皮肉った。