世界基準から外れたキャンペーンは強化の王道から外れる危険性も。
一方で浦和とは対極の姿勢を見せるのが、鹿島と神戸だ。
小さな町興しに成功し、一貫してトップレベルを維持する鹿島は、Jの理想郷である。リーグ創設から20年以上を経て、開幕当時隆盛を誇った東京Vやライバルだった磐田がJ2に降格していったのを後目に、丹念に高卒選手を見極めながら世代交代に成功して来た。
逆に育成のサイクルを確立しない限り、生き残れない背景が努力を促したと言えるかもしれない。昨年も敢えて世代交代をテーマとしながら見事に3位という成果を収めた。ただし総合力と勢いではナンバーワンだが、ACL出場と代表選手増加の可能性もあり、若い選手たちに未知数の要素がついて回る。
また神戸は2年間で急変貌を遂げた。小川慶治朗、岩波拓也らの生え抜き組や、高卒獲得の森岡亮太らが軸として成長し、一方では効果的な補強を継続。シンプリシオの離脱は痛いが、今年も安田理大や高橋祥平など旬な即戦力を獲得した。
さらには昨年失速した苦い経験を繰り返さないためにも、ベテランのネルシーニョ監督を招聘している。チームの勢いを引き出すのが上手い監督なので、前後期どちらかを制し、チャンピオンシップに挑戦する可能性は秘めている。
チャンピオンシップは、年間最多勝点チームがシードされ、そこに年間上位や前後期制覇チームによるノックアウトを勝ち抜いたチームが挑戦する。この方式だとACL組に後半戦で巻き返しのチャンスが広がる。逆にそれ以外のクラブは、本来高い総合力を持つACL組が苦しむ前半でチャンピオンシップへの出場権を確保しておきたい。だが昨年のG大阪の例を見ても、有利なのは後半勢いに乗るチームで、総合成績の上位が優位に立つ保証はない。
おそらく「見なし決勝戦」を増やした方式は、一時的にファン開拓には役立つのだろう。似たように前後期を分けてチャンピオンシップを行なう方式は、Jリーグが開幕当初の言わばキャンペーン期間に実施して来たものだった。だがシーズンを通してのリーグ戦だけでは人気に陰りが見え始めたから、再度キャンペーンで人(スポンサー)集めを図ろうとしたことになる。
しかし世界基準から外れたキャンペーンは、選手やチーム強化の王道からも外れてしまう危険性がある。
やはり着実な文化の形成と強化促進を考えれば、チャンピオンシップなど不要だとの世論を誘発するくらい高い志を持つ、真のチャンピオンが誕生してくれることを願いたい。
文:加部 究(スポーツライター)
小さな町興しに成功し、一貫してトップレベルを維持する鹿島は、Jの理想郷である。リーグ創設から20年以上を経て、開幕当時隆盛を誇った東京Vやライバルだった磐田がJ2に降格していったのを後目に、丹念に高卒選手を見極めながら世代交代に成功して来た。
逆に育成のサイクルを確立しない限り、生き残れない背景が努力を促したと言えるかもしれない。昨年も敢えて世代交代をテーマとしながら見事に3位という成果を収めた。ただし総合力と勢いではナンバーワンだが、ACL出場と代表選手増加の可能性もあり、若い選手たちに未知数の要素がついて回る。
また神戸は2年間で急変貌を遂げた。小川慶治朗、岩波拓也らの生え抜き組や、高卒獲得の森岡亮太らが軸として成長し、一方では効果的な補強を継続。シンプリシオの離脱は痛いが、今年も安田理大や高橋祥平など旬な即戦力を獲得した。
さらには昨年失速した苦い経験を繰り返さないためにも、ベテランのネルシーニョ監督を招聘している。チームの勢いを引き出すのが上手い監督なので、前後期どちらかを制し、チャンピオンシップに挑戦する可能性は秘めている。
チャンピオンシップは、年間最多勝点チームがシードされ、そこに年間上位や前後期制覇チームによるノックアウトを勝ち抜いたチームが挑戦する。この方式だとACL組に後半戦で巻き返しのチャンスが広がる。逆にそれ以外のクラブは、本来高い総合力を持つACL組が苦しむ前半でチャンピオンシップへの出場権を確保しておきたい。だが昨年のG大阪の例を見ても、有利なのは後半勢いに乗るチームで、総合成績の上位が優位に立つ保証はない。
おそらく「見なし決勝戦」を増やした方式は、一時的にファン開拓には役立つのだろう。似たように前後期を分けてチャンピオンシップを行なう方式は、Jリーグが開幕当初の言わばキャンペーン期間に実施して来たものだった。だがシーズンを通してのリーグ戦だけでは人気に陰りが見え始めたから、再度キャンペーンで人(スポンサー)集めを図ろうとしたことになる。
しかし世界基準から外れたキャンペーンは、選手やチーム強化の王道からも外れてしまう危険性がある。
やはり着実な文化の形成と強化促進を考えれば、チャンピオンシップなど不要だとの世論を誘発するくらい高い志を持つ、真のチャンピオンが誕生してくれることを願いたい。
文:加部 究(スポーツライター)