軽い方がいいけど、それだけじゃダメ。PUMAに見るサッカースパイク進化論

カテゴリ:特集

松尾祐希

2020年08月12日

開発の裏に、“人類最速の男”の影あり

(C)Getty Images

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 ペップ・グアルディオラが取り入れている戦術において、2013シーズンから2018シーズンにてスプリントする距離をデータ計測したところ、5シーズンで21.2% も距離が伸びていたというデータがある。

 このことからもわかるように、“スピード”という要素はゲームを決める重要なファクターとなっている。戦術面や選手のプレースタイルに合わせて、PUMA社は新たなモデルの開発に着手するわけだが、そこでヒントを得たのが、“人類最速の男“ウサイン・ボルトのシューズだった。

 なぜ、ボルドの陸上スパイクが開発に大きく寄与したのか。当時を振り返り、福井氏は事の成り行きをこう説明する。

「開発は2年以上前からスタートしていました。その際に陸上短距離のスパイクからアイデアを得ることとしました。なぜなら我々は人類最速のウサイン・ボルト選手向けのスパイクを作っている実績があり、各クラブのスポーツサイエンティストからの助言や先述のデータを基に試作を重ねていきました。。

 今まではアウトソール(スパイクの裏側)の部分にぺバックス®️か、TPU か、どちらかの素材しか採用できませんでした。ぺバックス®️は軽量ナイロン素材で軽い。一方でポリウレタンのTPUは耐久性があるけど重い。

 ぺバックス®️とTPUを組み合わせるアウトソールの軽量性に限界があったのですが、新しい技術の開発により、これら2つの素材を組み合わせても耐久性と軽量性の両方が実現できました」

 スピードを重視する選手また、近年の先述のトレンドを反映させ、ウサイン・ボルトのシューズから起草されたPUMA社の “ULTRA”は、もはや限界とも思える160gまで軽量化を実現させた。

 課題だった耐久性も様々なカテゴリーの選手に40時間以上のテストでクリア。この夏から、海外選手ではセルヒオ・アグエロ、アントワーヌ・グリエーズマン、日本人選手では伊東純也、久保裕也といったスピードスターが、このULTRAを履いてプレーする。

 PUMA社が軽量化を目指すきっかけは、サミュエル・エトー(元バルセロナほか)の声が始まりだった。軽量スパイクと銘打って2006年に世に出した「V1.06 i FG」の片足重量は約200g。それから14年後、耐久性やフィット感など数字では表せない部分を数倍向上させつつ、20%の軽量化を実現させた。まさに努力の結晶といえるだろう。

 ただし、スパイクの進化は日進月歩。素材と技術の分野では常に新しいものが生み出され、上を目指す選手のスパイクへの要望もやむことがない。adidas、NIKE、PUMAなど、世界各国のスパイクメーカーは切磋琢磨し合い、そしてそれぞれに、現在進行形で新しいスパイクの開発も始めている。

 他競技の知恵、様々な業種の技術、各社が長きに渡って積み重ねてきたノウハウ。そうした英知の結集が次のスパイクを生み出す。最高の一足を作り続ける彼らの挑戦に終わりはない。
 
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