逆説すれば、強化部門が場当たり的でしがらみで人材が回っているようなクラブは、たとえ有力な選手を引き入れられたとしても、ビジョンが乏しいだけに、力を引き出せない。結局、監督のクビを挿げ替え続けるか、選手を大量に入れ替えるしかないのだ。

「あの強化、面談しても、自分のプレーに関する説明がとんちんかんで。本当に見ているのかな？って。正しく評価されているのか、不安になります」

　選手から、そういう話を聞くことがある。

　そうしたクラブはたいてい、戦い方が安定しない。選手の不満がたえず湧き起っており、その選手を外に出し、事情を知らない選手を入れ、どうにか組織を成立させる。しかし、それでは必ず破綻が来るのだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき／1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL　TEATRO　ラ・リーガ劇場』（いずれも東邦出版）など多数の書籍を出版。2018年３月には『ラストシュート　絆を忘れない』（角川文庫）で小説家デビューを果たした。