チームとしての練習になると解けてしまう「ピッポの魔法」…。
マッシミリアーノ・アッレグリ政権の末期に加入した本田は、その後、マウロ・タソッティ(ほんの数試合だったが)、セードルフ、インザーギの下でプレーしてきた。そして、これら全ての監督たちから、常に高く評価されてきた。
その自己犠牲の精神とプロ根性を称えられる本田が、こんな大変なミランでの1年半を、何を思って過ごしてきたかは非常に興味あるところだ。
ロッカールームでの本田は、決してリーダー格ではない。そうでないほうがいいだろう。今のミランでリーダーを務めるなど、とてつもなく大変なことだ。
昨夏のメルカートでミランは12人の選手を獲得し、18人の選手(レンタルや契約の期限が切れた選手を含め)を放出した。そして先日の冬のメルカートでは6人の新顔が加わり、逆に3人が出て行った。こう目まぐるしくメンツが変わっては、チームワークなど望むべくもない。ロッカールームが混乱するのは必至だ。
この状態を収拾するには、当然ながら監督をフォローできる真のリーダーが必要だ。しかし、キャプテンのリッカルド・モントリーボは良い青年ではあるが、優しすぎる。今、ミランに必要なのはもっと強い怒りを持ったリーダーである。
一方、選手から見たインザーギ監督の一番の弱点は、何かを決定する場合に強い意志を感じられないところにある。彼は何を決めるにしても、スタッフと話し合う。それは練習中でも、試合中でも同じだ。
こんなことが続けば、選手たちが不安に陥るのも当たり前だ。たとえ指示が間違っていたとしても、それが監督自身の考えたことであれば、選手は彼についていこうと思うものだ。過ちは誰にでもある。しかし、誤った忠告に監督が惑わされた挙句のミスだった場合、選手にはやりきれないものがある。「やってられない」というのが本心だろう。
おまけに、インザーギ監督自身が確信を持って取った行動も、残念ながら良い結果に繋がらないケースが多い。
例えば、パブロ・アルメロはインザーギ監督が強く望んで獲得した選手であるにもかかわらず、プレーさせてもらえない。フェルナンド・トーレスはその実力を引き出されることなくミランを去った。そして、エムバイ・ニアングも長いことベンチ要員を強いられたが、ジェノアに移った途端に2ゴールをマークしている。
また、モントリーボは中盤の底でプレーすることを熱望しているのに、いつもハーフウイングとして使われている。これらの事実は、自分たちのボスについていくことに対し、選手が困難を感じていることを物語っている。
そして選手たちは、確信はなくとも、来シーズンの監督がインザーギでないことを何となく予想はしている。そんな状況では、この難しい局面から抜け出すために闘志を持てと言われても、簡単にできるものではないだろう。
現在もインザーギ監督は、これまでと変わらない練習を続けている。選手一人ひとりと対話し、冗談を言い(これはうまくいっている)、戦術的な動きを指示する。ところが、チームとしての練習となると、“ピッポ”の魔法はたちまち解けてしまい、全てはまた混乱してしまうのだ。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト)
協力・翻訳:利根川晶子
Marco PASOTTO/Gazzetta dello Sport
マルコ・パソット
1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。
その自己犠牲の精神とプロ根性を称えられる本田が、こんな大変なミランでの1年半を、何を思って過ごしてきたかは非常に興味あるところだ。
ロッカールームでの本田は、決してリーダー格ではない。そうでないほうがいいだろう。今のミランでリーダーを務めるなど、とてつもなく大変なことだ。
昨夏のメルカートでミランは12人の選手を獲得し、18人の選手(レンタルや契約の期限が切れた選手を含め)を放出した。そして先日の冬のメルカートでは6人の新顔が加わり、逆に3人が出て行った。こう目まぐるしくメンツが変わっては、チームワークなど望むべくもない。ロッカールームが混乱するのは必至だ。
この状態を収拾するには、当然ながら監督をフォローできる真のリーダーが必要だ。しかし、キャプテンのリッカルド・モントリーボは良い青年ではあるが、優しすぎる。今、ミランに必要なのはもっと強い怒りを持ったリーダーである。
一方、選手から見たインザーギ監督の一番の弱点は、何かを決定する場合に強い意志を感じられないところにある。彼は何を決めるにしても、スタッフと話し合う。それは練習中でも、試合中でも同じだ。
こんなことが続けば、選手たちが不安に陥るのも当たり前だ。たとえ指示が間違っていたとしても、それが監督自身の考えたことであれば、選手は彼についていこうと思うものだ。過ちは誰にでもある。しかし、誤った忠告に監督が惑わされた挙句のミスだった場合、選手にはやりきれないものがある。「やってられない」というのが本心だろう。
おまけに、インザーギ監督自身が確信を持って取った行動も、残念ながら良い結果に繋がらないケースが多い。
例えば、パブロ・アルメロはインザーギ監督が強く望んで獲得した選手であるにもかかわらず、プレーさせてもらえない。フェルナンド・トーレスはその実力を引き出されることなくミランを去った。そして、エムバイ・ニアングも長いことベンチ要員を強いられたが、ジェノアに移った途端に2ゴールをマークしている。
また、モントリーボは中盤の底でプレーすることを熱望しているのに、いつもハーフウイングとして使われている。これらの事実は、自分たちのボスについていくことに対し、選手が困難を感じていることを物語っている。
そして選手たちは、確信はなくとも、来シーズンの監督がインザーギでないことを何となく予想はしている。そんな状況では、この難しい局面から抜け出すために闘志を持てと言われても、簡単にできるものではないだろう。
現在もインザーギ監督は、これまでと変わらない練習を続けている。選手一人ひとりと対話し、冗談を言い(これはうまくいっている)、戦術的な動きを指示する。ところが、チームとしての練習となると、“ピッポ”の魔法はたちまち解けてしまい、全てはまた混乱してしまうのだ。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト)
協力・翻訳:利根川晶子
Marco PASOTTO/Gazzetta dello Sport
マルコ・パソット
1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。