プロフットボーラーにおける「天才の定義」。カズ、中田は天才なのか?

カテゴリ:連載・コラム

加部 究

2020年06月29日

天才はイメージだけで進化した

コーチの指示以上の解決策を見つけ出す。ストイコビッチの閃きは、Jリーグでは異質に映った。(C)Jリーグフォト

画像を見る

 若い世代には伝わり難いが、日本サッカー史上別格の天才は釜本邦茂である。野球一辺倒だった時代に、こんなスーパーアスリートがサッカーを選んだのは奇跡だった。今なら大谷翔平が迷い込んで来るような僥倖に近い。実際釜本は、引退後にセ・リーグで首位打者3度の江藤慎一の野球教室に参加し、現役高校生投手からホームランを叩き込み驚かせたという。江藤は感嘆した。

「やっぱり釜本さん、野球をやっていたら王さん、長嶋さんクラスでしたよ」

 当時180センチ超えは「クマ」に例えられるサイズなのに、柔軟な筋肉、俊敏性、爆発力のすべてを備えていた。元同僚DFの弁だ。

「普通の人は何千本、何万本と蹴って少しだけ上達するのに、釜本は10~15本で出来てしまう。早稲田大学時代は、1年生なのに走る時はいつもビリの方をトボトボ。それでもリーグ開幕戦から4ゴールだから、練習で手を抜いても仕方がないか、と誰も文句を言わなかった」
 
 かつてバルセロナ時代のボビー・ロブソン監督は「戦術はロナウド」と言い放ったが、まさに当時日本代表の戦術は釜本を軸にしていた。前述の同僚コメントを立証することになるのが、メキシコ五輪を迎える1968年初頭のドイツ留学である。タイミングが悪くチームはウインターブレイク中でオフ。仕方がないので映写機を持ち出し昔の名場面を繰り返し見ていたのだが、この2か月間で「見違えた」と誰もが口を揃える。天才はイメージだけで進化した。そのまま五輪本番では得点王を獲得し、チームを銅メダルに導いたのは周知の通りだ。ボールを蹴り始めてわずか10年あまりでの快挙だった。

 アマチュア時代の日本代表選手たちは、欧州クラブへの練習参加を繰り返していたので、釜本とトップレベルの比較は出来た。

「当時世界最高のストライカーはゲルト・ミュラー。そのミュラーと得点王争いをしていたユップ・ハインケスと比べても見劣りしなかった」(日本代表の同僚だった落合弘)
 
【関連記事】
小野伸二は「日本の宝」で「最高傑作」。“J歴代ベスト11”で称賛の嵐! 中村俊輔も「シンジしかいない」と認める
「化け物」「リアルキャプテン翼だ」久保建英が披露した衝撃の“ダブルタッチ3人抜き”にファン興奮!
知らない世代に伝えたい。"絶頂期のカズ”は半端ないを通り越して神がかっていた
惚れ惚れする才能。あとちょっとの運さえあれば、大島僚太はいずれ日本代表を支配できるマエストロになれる
【日本代表】ストライカー不遇の法則。佐藤寿人、豊田陽平…それでも代表監督に愛されなかった理由

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ