柴崎も森保監督からの絶大な信頼と期待を自覚し、2022年カタール・ワールドカップ2次予選スタート時から中盤の司令塔として君臨している。それは指揮官の思惑通りに違いないし、彼自身が心身両面で目覚ましい成長を遂げているのもチームにとって大きなプラスと言っていい。スペインで出場機会を増やし、個人能力をさらに研ぎ澄ませていくことが、今後の柴崎に求められるところだ。
その一方で、柴崎への依存が高まれば高まるほど、「いざという時」が不安視されるようになってきたのも事実。柴崎の相棒としては、当初ファーストチョイスと位置付けられていた遠藤航を筆頭に、2019年から一気に頭角を現わした橋本拳人(FC東京)、1年ぶりに代表復帰した山口や井手口、昨年12月のE-1選手権(釜山)で初キャップを飾った東京五輪世代の田中碧(川崎)らが名乗りを挙げている。さらなる成長が期待される選手が多いなか、ここからどんな軌跡を描いていくか分からないが、現時点では「柴崎不在でも十分に戦える状況」とは言い切れない。森保監督はそういう評価をしているはずだ。
振り返ってみると、代表ボランチはこれまでも特定の選手に依存する傾向が高かった。史上初のベスト16入りを果たした2002年日韓ワールドカップも稲本潤一(相模原)と戸田和幸(解説者)が鉄板だったし、2010年南アフリカ・ワールドカップ以降は遠藤保仁(G大阪)と長谷部のコンビが長く君臨してきた。
過去の歴史が物語る“依存”のリスク。柴崎不在で十分に戦えるのか?
アルベルト・ザッケローニ監督が指揮を執っていた頃は2人以外の組み合わせが考えられないほどだった。ゆえに、長谷部のケガや遠藤の不振がブラジル本番に大きく響いた。山口と青山も奮闘したが、急な抜擢でチーム全体の歯車が微妙に狂い、好結果にはつながらなかった。
その後のハビエル・アギーレ監督も遠藤と長谷部に依存し、ハリルホジッチ・西野両監督も長谷部に頼り続けた。強い代表を作ろうと思うなら、ボランチの多彩なバリエーションを用意していなければならないのだが、日本はまだそこまでの領域に達していないのかもしれない。「柴崎依存問題」もしばらく続きそうな気配だ。