総勢14名はJリーグ屈指! なぜガンバ大阪はOBたちの“帰還”を推進するのか

カテゴリ:Jリーグ

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2020年03月24日

GAMBAISMを全カテゴリーに共有・浸透させられるか

 どちらかと言えば、ガンバはOBに対して冷たいクラブだった。数年前までクラブ内で仕事に従事するOB(プロ経験者)は数人程度で、そもそもそこに重要性を見出してもいない。引退や退団のセレモニーは実施しても、鹿島のようにテストモニアル(引退記念試合)などは開催されなかった。

 流れが変わったのは、やはり生え抜きでアイコンだった宮本の帰還だろう。2000年代まで隆盛を極めていたアカデミーを改革すべく、クラブとしてのDNAを受け継ぐOB──とりわけ下部組織出身の生え抜き──の存在がクローズアップされるようになる。OB採用を推進したのが、現在トップチームとアカデミー部門の強化を司る松波正信GMだ。同じく2018年1月に、5年ぶりの復帰を遂げていた。

 元ミスターガンバは「あえて(OBを)獲りに行っている」と豪語する。復帰早々に「ガンバOB会」を設立。盟友・木場昌雄の協力を得ながらOB間の交流を活発化させ、つぶさに個々の状況をチェックしている。昨年に18年ぶりのガンバ復帰を果たした森下は、「根気よく(松波が)誘ってくれた。僕が住んでいる九州まで口説きに来てくれて、やっぱり嬉しかったですよ」と回顧する。

 もちろん、闇雲にOBを獲得しているわけではない。ましてやセカンドキャリアのスタート地点として、路頭に迷いそうなOBを救済しているわけでもない。その人選はシビアだ。松波とクラブが目ざしているのは、2年連続で採用したスローガン『GAMBAISM(ガンバイズム)』の具現化である。これをバルセロナのように、ジュニアからトップに至るすべてのカテゴリーに共有・浸透させるのが狙いだ。

 クラブの公式見解によると、『GAMBAISM』は「ボールを保持しながら相手を圧倒し、アグレッシブにゴールを奪う」もの。つまりは、西野朗政権下で「4点取られても5点取って勝ち切れ!」と発破をかけられた選手たちが築き上げた、黄金期の超攻撃的スタイルである。

 復活させたいのはそれだけではない。どこかマンネリ化していたアカデミーの改革にも着手し、トップで活躍できる選手を育て上げる新たなシステムを構築しようと躍起だ。

 トップチームを率いる宮本は、OBが多い利点を次のように見ている。

「OBがコーチングスタッフにいるのは、同じサッカーを目ざすうえでベースになる。練習のメニューを作成するにしても、やはりそこは相通ずるところが多いですからね。そしていま、このカテゴリーの監督をやっててあらためて感じるのが、アカデミーの重要性。そこにも明神や和道のように新たにOBが加わって、自分たちのサッカーがなんなのかを早い年代から伝えてくれている。なんとかそこから、優秀な選手が育ってきてほしい」

 
 当然、すべてのOBが有能ではないだろう。向き不向きはどうしてもあるわけで、プロの世界である以上、ぬるま湯であってはならない。

 その意味で、ガンバは外部の血も積極的に取り入れている。昨年は、史上最年少でS級ライセンスを取得した宮原裕司をU-23コーチに招聘した。30代後半にしてアビスパ福岡のアカデミー部門を統括する立場にあった敏腕を引き抜いたのだ。さらに今年は、横浜F・マリノスの育成部門で要職を歴任した坪倉進弥をアカデミーダイレクターに迎えた。重要項目であるユース改革の最高責任者に、言うなれば“外様”を指名したのである。

 宮原は今季からトップのコーチに昇格して、さっそく存在感を高めている。かたや坪倉は松波GMとともに育成年代における『GAMBAISM』を構築すべく、トップチームのスタッフの意見も取り込みながら、急ピッチで革新へと邁進している。

 もしOBたちが彼らを受け入れず、能力を引き出せないならば、いずれはただの慣れ合い集団に落ちぶれるだろう。だが宮原も坪倉も明るく自発的なアクションを起こせる人材で、クラブカラーとの相性がすこぶる良い。ここまでのところ、相乗効果は明白だ。
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