「圭佑くん（本田）の印象ではガツガツ抑えられて、なかなかキープさせてもらえない」（酒井高）イラクを攻略するには、ショートパスで敵陣深くに切り込むよりもまず、ミドルでゴールを狙ったほうが効果的かもしれない。遠目からのシュートを意図的に打って相手にそのイメージを刷り込んだ後、３トップとインサイドハーフふたりは「パス＆ゴー」を多用したい。中央突破が困難なら、SBのサポートがポイントになる。とりわけ、パレスチナ戦でゴールに絡んだ長友は身体の切れが良く、今回も仕掛けや崩しの局面で重要な役割を果たしてくれそうだ。
 
　消耗戦になりそうなイラク戦では、途中出場の選手も鍵を握るだろう。フレッシュな力がどこまでチームを活性化できるか。例えばハイボールに強い豊田を投入した場合は、割り切ってクロスをバンバン上げる。スピード豊かな武藤なら、足もとではなく空いているスペースを見つけてそこに蹴り込む。局面に応じた攻撃手段で、イラクを揺さぶりたい。
 
　首位通過を狙うなら、引き分けでは不十分だろう。仮に２位抜けなら、準々決勝と準決勝を中２日で戦うはめになる。超過密日程を避ける意味でも、イラク戦での勝利は必須だ。
 
　アギーレ監督が関与した疑いのある八百長問題でバレンシアの裁判所が告発を受理した今、再び風雲急を告げている。このタイミングで無様な試合をすれば、チームはバラバラになる恐れもあるだろう。長谷部が言うように「選手、監督、コーチ、すべての人たちが同じ方向に向かってまとまっている」なら、それを改めて証明するのがイラク戦だ。日本の結束力が、文字どおり問われる。
 
取材・文：白鳥和洋（サッカーダイジェスト）