「人の心」のウエイトは大きい——組織であればどこにでも潜むリスク

今季南葛SCに移籍した青木は、社会人リーグで戦うことの難しさをインタビューの中で語っていた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

シーズン開幕戦の明治学院大スカーレット戦は、追いつかれての2-2の引き分け。堅守速攻型のチームにシーズンを通じて苦しめられた。写真:田中研治
リーグ戦を勝ったり負けたりしながらも、その中から評価できる点と課題となる点を洗い出してきた。評価できる点は成長に結び付け、課題になる点は対策を打った。それでも前年シーズンのような連勝街道とはいかない。やることは正しくやっているはずなのに結果が伴ってくれない。どこか勝ち切れない。なぜか。
シーズンを通して試合を観てきてつくづく感じさせられたのは「チームはいきもの」だということだった。
青木剛の言葉が非常に分かりやすい。
「先制しているのに追いつかれると、相手は想像以上に息を吹き返す一方で、自分たちは必要以上に意気消沈してしまう」
シーズンを通してチームを覆っていた、正体不明の違和感。それは誰もが感じていることだった。
「練習ではいいプレーが出ていて雰囲気もいいのですが、試合になると“負けられない”という気負った空気が出てきてしまう」(冨岡大吾)
「受けて立っても普通にプレーすれば勝てるはずなんですが、それができてないのが現状」(安田晃大)
チームには流れがある。特に長期にわたるリーグ戦では、一度チームとしての流れができると、それを変えることは生半可なことではない。
これが正の流れであれば問題ない。プラスのスパイラルに乗り、運も味方につく。不本意な試合でも勝利を収めたりすることで、よりチームとしての勢いは増す。しかし、負の流れになると、全く逆の現象が待っている。マイナスのスパイラルに陥り、運にも見放される。どんなに会心の試合運びをしても勝点を落とす。結果、チームとしての勢いは失速していく。
流れの源はひとつのきっかけから生まれやすい。ある試合の結果であったり、もっと突き詰めればあるワンプレーであったりもする。南葛SCの場合は、開幕戦の明治学院スカーレット戦で試合終了間際に追いつかれ引き分けた試合が、負の流れの源であったように感じる。そして第4節で喫した初めての敗戦で流れがほぼ定まってしまった。
だが南葛SCに限らず、シーズン前には優勝候補と目されていたチームが、いざ幕を開けたら低迷して降格危機に陥ったり、選手や監督を入れ替えるといった思い切った改革をしてもチームが勝ち星から見放されたりする姿は、Jリーグに限らず、野球やバスケットといった国内外の他のチームスポーツでもよく見受けられることだ。そしてさらにいえば、チームスポーツに限らず、組織であればどこにでも潜むリスクだといえる。
なぜこういうことが起きるのか。それはチームを構成しているものが人間だからだろう。当たり前のことだが、当たり前だからこそ忘れがちな点であると思う。体力や技術、戦術といった能力を超えるほど「人の心」は勝負ごとで大きなウエイトを占める。これが個人であれば、修正から改善まで短い時間で済むかもしれない。しかしこれがチームや組織となると、とたんに物事は複雑になる。ある一つの問題に対する理解度、温度感、捉え方などは個々で全て異なる。それを均一にならし、意思を統一し、同じベクトルに向かわせることは、想像しても難しいが実際はさらに困難が伴うものだろう。
シーズンを通して試合を観てきてつくづく感じさせられたのは「チームはいきもの」だということだった。
青木剛の言葉が非常に分かりやすい。
「先制しているのに追いつかれると、相手は想像以上に息を吹き返す一方で、自分たちは必要以上に意気消沈してしまう」
シーズンを通してチームを覆っていた、正体不明の違和感。それは誰もが感じていることだった。
「練習ではいいプレーが出ていて雰囲気もいいのですが、試合になると“負けられない”という気負った空気が出てきてしまう」(冨岡大吾)
「受けて立っても普通にプレーすれば勝てるはずなんですが、それができてないのが現状」(安田晃大)
チームには流れがある。特に長期にわたるリーグ戦では、一度チームとしての流れができると、それを変えることは生半可なことではない。
これが正の流れであれば問題ない。プラスのスパイラルに乗り、運も味方につく。不本意な試合でも勝利を収めたりすることで、よりチームとしての勢いは増す。しかし、負の流れになると、全く逆の現象が待っている。マイナスのスパイラルに陥り、運にも見放される。どんなに会心の試合運びをしても勝点を落とす。結果、チームとしての勢いは失速していく。
流れの源はひとつのきっかけから生まれやすい。ある試合の結果であったり、もっと突き詰めればあるワンプレーであったりもする。南葛SCの場合は、開幕戦の明治学院スカーレット戦で試合終了間際に追いつかれ引き分けた試合が、負の流れの源であったように感じる。そして第4節で喫した初めての敗戦で流れがほぼ定まってしまった。
だが南葛SCに限らず、シーズン前には優勝候補と目されていたチームが、いざ幕を開けたら低迷して降格危機に陥ったり、選手や監督を入れ替えるといった思い切った改革をしてもチームが勝ち星から見放されたりする姿は、Jリーグに限らず、野球やバスケットといった国内外の他のチームスポーツでもよく見受けられることだ。そしてさらにいえば、チームスポーツに限らず、組織であればどこにでも潜むリスクだといえる。
なぜこういうことが起きるのか。それはチームを構成しているものが人間だからだろう。当たり前のことだが、当たり前だからこそ忘れがちな点であると思う。体力や技術、戦術といった能力を超えるほど「人の心」は勝負ごとで大きなウエイトを占める。これが個人であれば、修正から改善まで短い時間で済むかもしれない。しかしこれがチームや組織となると、とたんに物事は複雑になる。ある一つの問題に対する理解度、温度感、捉え方などは個々で全て異なる。それを均一にならし、意思を統一し、同じベクトルに向かわせることは、想像しても難しいが実際はさらに困難が伴うものだろう。