しかも、4バックシステムの完成度が低く、混乱に拍車をかけている。慣れ親しんだ3バックから4バックに切り替えると、途端に攻守両面で脆さや拙さが目立つようになる。
振り返ると、昨季のサウサンプトンを支えたのは3バックシステムだった。陣形の重心を後方に置き、前線から激しくプレッシングを仕掛ける。そうすることで、守備は安定して攻撃も鋭さが増した。選手たちも、この3バックシステムに手応えを掴んでいた。
その中心にいたのが吉田だった。危機察知力とカバーの巧さを生かして最終ラインを統率。クレバーな吉田が真ん中に陣取ることで、両脇にいるヴェステルゴーとベドナレクも思い切りのよい守備ができていた。4バックにして吉田がいなくなると、ヴェステルゴーとベドナレクはバタバタしはじめる。
現状、吉田を最後尾に配した3バックが最も安定感があるのに、指揮官は4バックとの併用にこだわる。ボーンマス戦の試合前、その狙いを次のように説明していた。
「これまで3バックで大金星を挙げてきたのは事実だが、我われには柔軟性がある。フレキシブルに戦えることが、おそらく現時点でこのチーム最大の強みだろう。対戦相手の出方次第で、我々はフォーメーションを自在に使い分けることができるのだ。プレミアのクラブは複数の戦術を用いているのだから、我々も柔軟性を持って戦う必要がある。よりフレキシブルに戦える集団こそが優れたチーム。それが私の持論だ」