「言うことないですよ。(敗戦は)ジョークでしょ」
取材エリアに姿を見せたサウサンプトンの吉田麻也は、開口一番でそう語った。
9月20日に行なわれたプレミアリーグ第6節のボーンマス戦。ベンチスタートの日本代表DFは最後まで出番がなく、試合終了のホイッスルをベンチで聞いた。チームは1-3で敗戦。試合後の吉田は結果に怒りをにじませ、先発を外れたことにもまったく納得がいっていない様子だった。
筆者も、この試合で吉田が先発すると踏んでいた。前節のシェフィールド・ユナイテッド戦(14日)で3バックのCB中央として先発し、堅実な守備で1-0の無失点勝利に貢献していたからだ。「勝っているチームはいじらない」との格言もあるし、なによりサウサンプトンはこうした勢いにすがりたいほど調子が良くない。
ところが、ラルフ・ハーゼンヒュットル監督は、前節の勝因になった3バックシステムをあっさりと捨て、ここまで機能しているとは言い難い4バックシステムに切り替えた。指揮官の狙いはまったく機能せず、ホームゲームながら1-3の完敗を喫した。
しかも、ディフェンス陣がミスを連発し失点の山を築いた。1失点目はCK時にマークを簡単に外し、2失点目も左サイドをきれいに崩された。そんな彼らの混乱ぶりを象徴していたのが、後半アディショナルタイムに喫した3失点目だ。相手GKのロングボールに、GKアンガス・ガンとDFヤン・ベドナレクがお見合いして衝突……。こぼれたボールを敵に拾われ、無人のゴールに決められた。
失点後、あまりにお粗末なゴールにサウサンプトンのサポーターは一斉に席を立った。間もなくして試合終了のホイッスルが鳴ると、スタンドからむなしいほど小さなブーイングが鳴り響いた。怒りを露わにするというより、ブーイングをする気にもなれないほどの失望と無力感に襲われているようだった。
それだけに、吉田の苛立ちは理解できた。前節はアウェイゲームながらシェフィールド・Uを無失点に抑え、貴重な勝点3を獲得した。先発した吉田は最終ラインを統率してクリーンシートを達成し、チームを勝利に導いた。DFとして最高の結果を掴んだのだから、迎える今節もスターティングメンバーに名を連ね、今季初のリーグ連勝を目指すと考えるのは至極当然のことだった。