横浜FC・下平監督は中村俊輔のフル出場が収穫のひとつだと語る
カズが36分にファウルを犯し、レフェリーの笛が鳴ったあとも相手に何度もチャージ。これには横浜サポーターから大ブーイングが上がった。カズ本人は試合後、「少し押し込まれてきたので、チーム全体で強く行こうと行動で示したかった」と語った。
試合の流れは横浜FCに傾きかけたが、抜け目なく追加点を奪ったのは横浜だった。45分、カウンター気味に右サイドをドリブルで駆け上がった大津がクロス、相手のクリアが短くなったところに扇原が猛然と飛び込み、あとは決めるだけという完璧な体勢になると、横浜FCがたまらずファウル。PKが与えられると、大津が確実にゴール左隅に蹴りこんだ。
前半同様、後半の立ち上がりも横浜が圧倒する。49分には右からの長いクロスを遠藤が胸でワントラップしてボレーを蹴り込むも藤井がブロック。51分には左からのクロスにゴール前中央で大津が完全フリーで飛び込むも、わずかに合わず。さらに53分、左からのクロスをフリーの三好がフリーでヘディングで合わせるもGKの正面。なかなか追加点を奪えない。劣勢の横浜FCは中村が松原に背後からタックルしイエローカード。軽く当たっただけに見えたが、松原のアピールが功を奏した形だ。
その後は2点リードで無理に攻め急がなくなった横浜に対し、横浜FCが反撃を開始。62分にカズが斉藤と交代すると、カズに相手サポーターからも拍手。カズはキャプテンマークを中村に託した。
その後、交代出場の斉藤が仕事をやってのけた。中盤でのボールの奪い合いに、2列目から抜け出すと、そのままドリブルでボールを運びスルーパス。これを齋藤が確実にゴールに流し込み1点を返した。
ますます反撃ムードが高まる横浜FCは、右サイドでロングボールに反応して独走しかけた瀬沼に、ゴール前から大きく飛び出して対処しようとしたGKの朴が激突。先にボールに触って相手を抜きかけた瀬沼に朴が体当たりした形で、朴を抜けばガラ空きの相手ゴールがあるのみ。得点機会阻止の1発退場でもおかしくないプレーだったが、ファウルにならず。朴の負傷交代で事態は収束する。
さらにイバや北爪を投入して横浜FCは圧力を高めるが、横浜も焦らず確実にボールをキープしてファウルを誘うなど、J1上位の貫禄を見せる。そのまま試合はタイムアップ。2-1で横浜が勝利した。
試合後の会見で下平監督は「俊輔をフルタイム使うことは想定しておらず、交代を考えていた。しかし、効果的な配球が目立ったり、フリーキックに期待したりというところで、代えずにいった。俊輔が90分フル出場できたことも、この試合の収穫のひとつ」と語った。
締めくくりには、囲み取材での記者の質問に対し、細かい戦術的な話になると饒舌になり言葉に力がこもる中村の姿を挙げておこう。それはまるで41歳の“サッカー小僧”のようだった。
取材・文●二本木昭(フリーライター)