試合後、ペトロヴィッチ監督は記者会見で敵将を称える
その後も攻撃的姿勢は貫くと、札幌のプレスを無効化するパス回しで流れを持ってきた。追加点は相手のミスによるものだったが、それを見逃さない抜け目なさと集中力があった。リードしてからは自陣でブロックを築き、スペースを与えない。最終ラインでボールを回すところから攻撃が始まる大分のサッカーでは5バックで守ることは大きな問題ではない。守から攻への切り替えのスピードはあまり求められず、じっくりパスをつなぎながら攻撃へと移行していくからだ。ただ、そのボール回しが機能しなくなると、相手に押し込まれる時間が増えるが、この試合ではその心配はなく、正しいポジションを取り、優位性を作り続け、相手がその優位性を潰そうとしたときに、どこにスペースが空くのか選手は共有できていた。
弟子に逃げ切られ、今季ダブルパンチを食らったペドロヴィッチ監督は、試合後の記者会見で「片野坂監督は素晴らしい指導者だ。J3からJ1に押し上げ、素晴らしいサッカーをしている。やりたいサッカーがチームに浸透している。将来が楽しみな監督だ」と称賛した。しかし、悔しさもあったためか、試合後に片野坂監督とサッカー談義に花を咲かすことはなかった。片野坂監督は「勇気を持って自分たちの戦い方ができた。札幌にダブル(2勝)は素直に嬉しい。今日は話せなかったがオフ中にどこかで話したい」と師匠に思いを馳せた。
取材・文●柚野真也(スポーツライター)
取材・文●柚野真也(スポーツライター)