冒頭で記したように琉球スタイルのサッカーでは、最終ラインからのビルドアップ力が求められる。前線への攻撃参加も然りだが、“求められることの多さ”が移籍決断の決め手になったようであった。
 
「トライできるというか。攻撃の部分でのビルドアップでボールをもらう回数も多いですし、自分の役割は守備以外の部分も求められているので。その中でまだ見せられていない部分を見せたい。可能性は幅広いですし、ここでは選手としてできることを高められます」
 
　そしてもうひとつ。「暖かいところに行きたかったんですよね」と岡﨑は口にする。一瞬冗談かと思ったが、怪我がちである自身の身体を考えたうえで、この要素は小さくないようだった。
 
　開幕から７試合しか消化していないなかで答えを出すのは時期尚早だが、岡﨑は全試合フル出場を果たしている。今のところ、この決断は正解だったと言えるだろう。
 
　開幕無敗記録を続けてきたなか、水曜日に行なわれた千葉との試合（０−１●）でついに土がついたが、わずかな差でもあった。前線での悪い失い方でカウンターを浴びる場面が多かったが、それを処理しなければいけない岡﨑は、あえてポジティブにこの現象を捉えている。
 
「絶対にこういうサッカーをやっていたらカウンターも食らうし、１対１、数的不利の場面がめっちゃ多いと思います。１試合に５回は来るので。でも、５回は来るピンチを防げるCBになれば、と。自分が持っているもともと良い部分も出るので」
 
　こう言えるのも、久しく味わえなかった実戦の喜びがあるからこそ。
 

「やっぱり試合に出ることは楽しいですね。単純にサッカーをするのがすごく楽しいし、その中でも成長できると言える。湘南で出られなかった悔しさを今、晴らしています」
 
　敗戦の悔しさはあれど、非常に清々しい様子であった。
 
　もう一度遠藤とプレーしたいか――。最後にこう聞いたのだが、質問を言い切る前にこう返してきた。
 
「本当に。それを目指して俺はがんばりますよ」
 
　開いた差を急速に埋めてもう一度同じピッチに立つために。琉球の、岡﨑の歩みはまだ止まらない。
 
取材・文●竹中玲央奈（フリーライター）