VARは"誤審問題"の解決策になるのか? ハンドの基準は? 導入による影響は?

カテゴリ:連載・コラム

清水英斗

2019年06月01日

「サッカーはボケのスポーツ」

ロシア・ワールドカップの決勝では、ペリシッチ(4番)のハンドが話題に。“意図的”だったのか判断は難しい。(C)Getty Images

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 焦点は『ルールの客観化』だ。手に当たって利益を得たら、すべてハンドとするか。これは客観性こそ完璧だが、PKを得るためにわざと相手の手を狙う輩が増えるのは間違いない。安易にルールを修正すれば、競技の魅力を損なうのは必至だ。
 
 3月に行なわれたIFABの年次会議では、ハンド基準が焦点のひとつになった。新シーズンのルールでは、得点機会で攻撃側の選手の手や腕にボールが当たった場合は、意図にかかわらず、偶然であっても反則と改定される。ただし、これは攻撃側のみで、守備側には適用されない。守備側は今まで通り、意図があるか、自然な位置か、といった部分でハンドが判定される。肩よりも高く上がった手や腕にボールが当たった場合はハンドとするなど、一部の基準は明確化されるが、依然としてグレーゾーンが存在することは変わらない。前述したペリシッチのケースも、結局、人間の主観によって判断されるわけだ。
 
 新ルールはグレーゾーンを縮小する。だが、これでけりが付くだろうか? そうは思わない。グレーがある限り、人は「正しい判定」を求め、今後も誤審騒ぎを続けるだろう。

 グレーゾーンの消去は可能なのだろうか。たとえば、手の自然な位置を、身体から何度までと角度で規定するのはどうか。ビデオルームで計測するのは可能だろう。タックルやジャンプなども、体勢別にハンドとなる手の角度を決める。つまりすべて数字で規定し、グレーゾーンを消すわけだ。人間の目では難しいが、テクノロジーを使って計測すれば不可能ではない。同様にボールとの距離、速さなど、そのボールを予測できるか否かも、デジタルに判定する。これも不可能ではない。
 
 だったら、いっそハンドは特定のアルゴリズムを適用し、ビデオルームで自動判断してもいいかもしれない。グレーゾーンが完全消去されれば、判定に異論を挟む余地はなくなる。そうやってハンドの判定がデジタル化されれば、オフサイドはもちろん、接触プレーも「客観的に!」と機運が高まりそうだ。
 
 ……あれ?主審、要らない?VAR導入→客観規則(グレーゾーンの消去)→AI判定→主審消滅。最終的にサッカーの未来は、そうなる気がする。
 
 サッカーはボケのスポーツ。ツッコミどころが多いのが、最大の魅力だった。だからこそ、人はパブで、居酒屋で、サッカーを語るのであり、現代の世界的な人気は、コミュニケーションが生み出したと言っても過言ではない。競技の余地、遊びは、大事な要素だった。
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