ベテランが去ったチームに置ける年長者の役割も積極的に買って出ている
移籍で6名、高卒、大卒合わせて6名の新人を獲得した今季の陣容も、ジョーにとっては追い風になる。なかでも大宮から来たマテウスと東海学園大から加入の榎本大輝はそれぞれ毛色の異なるドリブルで前線を活性化させており、ここに昨季から相性の良さを見せている前田直輝や相馬勇紀、もちろんガブリエル・シャビエルとの高度な連係もさらに密度が高まってきた印象が強い。磐田から期限付きで加入した伊藤洋輝については「彼は良い印象だね。素晴らしい。この準備期間を通してもっと成長できると思う」と期待をかけ、サポートを示唆。同胞のマテウスにも頻繁にアドバイスを送るなど、ベテランが去ったチームに置ける年長者の役割も積極的に買って出ている。こうしたチームへのコミット具合も昨季以上で、周囲とのコミュニケーションの深まりがさらなる攻撃の化学反応を促進してくれそうな期待も膨らむ。
気がかりなのは対戦相手のマークの激化だが、プレミアリーグでもプレーしたストライカーは落ち着いている。「マークされるのは間違いない。得点王にもなったし、相手の守備陣には目を付けられる立場になる。でも自分としてはまず全力を尽くすことが第一目標だからね」。昨季を通じても得点王への意欲を見せたことはなく、終盤戦では潰れ役もいとわなかった。前線からの守備意識も高まっていることは練習からも感じられ、ジョーのプレスバックという恐るべき武器が今季の名古屋には生まれる可能性もある。ただし、自分の“本業”を見失いはしない。
「目標の中には得点王は入れないようにしているけど、FWは得点を決めなければいけないポジション。しっかり自分がやらなければいけないことをやって、その結果として得点王になれればいいかな」
2年連続得点王への意気や良し。開幕からフルスロットルでジョーが走れば、そこには必ずやゴールという足跡が残っているはずだ。
取材・文●今井雄一朗(フリーライター)