クラブW杯決勝の大一番へ! 超攻撃的DF、塩谷司が持つ異色の才能と“移籍金”エピソード

カテゴリ:国際大会

中野和也

2018年12月22日

日本代表に選出された2014年に異例の5年契約を結んだ理由とは?

3年前のクラブW杯ではリーベルに惜敗。今回はチームを替えてリベンジに成功した。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 彼の魅力はもちろん守備、特に対人能力の強さも素晴らしいが、なんといっても攻撃力だ。2015年のG大阪とのチャンピオンシップ第1戦は史上最高レベルの名勝負として知られているが、広島の攻撃が一気に加速されたのは76分の同点劇。浅野拓磨の突破から柏好文のシュートをドウグラスが触ってゴールネットを揺らしたわけだが、そのきっかけとなった浅野へのスルーパスは塩谷が出したもの。さらに、14年川崎戦でのFK弾に誰もが驚愕し、15年清水戦ではキャプテン翼の「反動蹴速迅砲」を地でいくようなスーパーシュート、16年鳥栖戦での45mロングシュートなど、思い浮かぶのは得点シーンばかり。広島時代の17得点のほとんどはスーパーゴールと言えるもので、その能力は積極的な攻撃参加が許された広島時代に発掘されたと言っていい。

 ただ、これは筆者の個人的な考えだが、塩谷司の本当の魅力は彼の人間性にあると考える。それは、二度にわたる移籍の時、つまり際どい状況下で発揮された。

 例えば水戸から広島に移籍する時も、契約が切れる前に決断し、水戸に移籍金を残した。広島からアル・アインへの移籍についても、日本代表に選出されて海外志向が強まった2014年、クラブに5年契約を求めて締結した結果、大きな移籍金が広島にもたらされることとなった。それは明白に塩谷の意志。自分の成長を求める一方で、お世話になったクラブに対してしっかりと移籍金を残す方策を考える。なかなか、できることではない。

 もちろん、広島からアル・アインへの移籍を決断した時、チーム状態はどん底だったわけで、だからこそ森保一監督(当時)も含め、クラブ関係者は慰留した。しかし、塩谷個人の立場からすれば「質の高いFWはいるし、毎試合がACLのような感じ」というUAEリーグのビッグクラブからのオファーは魅力的だ。日本代表に復帰するには、ワールドカップで戦うには海外でのプレー経験が必要だという実感もある。その自分の意志を通し、クラブへのメリットも得られるために彼は長期契約を結んでいたのである。

 2015年、広島はクラブワールドカップでリーベル・プレートと対戦し、0-1で敗れた。3年後、塩谷司はカイオへの絶妙なスルーパスを通して同点ゴールを演出。リベンジを果たした笑顔を見ていると、心から拍手を贈りたくなる。決勝の相手は、レアル・マドリー。塩谷司がUAEに渡ってまで望んだ、リアル・ワールドクラスとの対戦である。

取材・文●中野和也(紫熊倶楽部)
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