初キャップを刻んだムーアにとっての、次の代表マッチは何とチリで開催されたワールドカップ。しかもグループリーグ初戦のハンガリー戦でスタメンに名を連ねると、ブラジルに1-3で敗れる準々決勝までの全ての試合で、彼はピッチに立ち続けた。
これだけでも、いかにムーアが早熟の天才だったかが分かるだろうが、驚くべきはその翌年に早くも、彼は代表キャプテンに就任するのだ。
名将アルフ・ラムゼーから絶大な信頼を寄せられ、早々に代表でCBとして不動の地位を確立したムーアだが、そこから大きなプレッシャーにさらされることとなった。というのも、前述した通り、66年には自国開催のW杯を控えていたからである。
サッカーの母国でありながら、それまでW杯ではベスト8が最高成績だったイングランドにとって、この大会での優勝は“義務”であり、ラムゼーのチームに対する期待と、それゆえにテストマッチで不甲斐ない結果、プレーに終わった場合の非難の声は凄まじいものがあった。
そして迎えた本大会、ウルグアイ、メキシコ、フランスとのグループリーグを開催国は2勝1分けで1位突破。ムーアに統率された守備陣は無失点で3試合を切り抜け、大荒れとなったアルゼンチンとの準々決勝でもクリーンシートを達成し、ジョフ・ハースト(彼もウェストハム所属)の1点を守り切った。
準決勝ポルトガル戦では初失点を喫するも、得点者はこの大会のトップスコアラーとなるエウゼビオ。強力なストライカーを、イングランドは2点を奪った後の、終盤のPKによる1ゴールに抑えて決勝進出を果たす。
ウェンブリーでの決勝、西ドイツとの一戦はシーソーゲームの末に延長戦に突入し、101分にいまなお論争の種となっているハーストのゴール(クロスバーを叩いて真下に落下)で勝ち越すと、120分にダメ押し。ハーストはこの大一番でハットトリックを達成するが、うち2点を素早く正確なパスでアシストしたのが、守備で奮闘するキャプテンだった。
エリザベス女王からジュール・リメ杯を授けられたムーア。彼はイングランド人選手として最初に黄金のトロフィーを手にした選手であり、またこれを天に掲げた現時点で唯一のキャプテンである。
彼は2年後、初めて参加した欧州選手権でもチームを率い、準決勝でユーゴスラビアに敗れたものの、ここで残した3位という成績は、イングランドの同コンペティションにおける最高成績だ(自国開催の96年大会はベスト4)。
そして自身3度目になったメキシコでのW杯では、大会前に思わぬアクシデントに見舞われる。テストマッチで訪れたコロンビア・ボゴタでボビー・チャールトンとともに宝石店に立ち寄った際、窃盗の容疑をかけられ、地元の警察に拘束されたのである。
当時の欧州と中南米の貿易摩擦による、嫌がらせのでっち上げだとか、前回優勝国に対する何者かの陰謀など、様々な説が流れたが、ムーアは毅然とした態度で無罪を訴えて、間もなく名誉を回復。以降もいっさいの動揺を見せることなく、ピッチ上ではこれまで以上にハイレベルなプレーを披露した。
チームは準々決勝で西ドイツに敗れて連覇はならなかったが、グループリーグでは、この大会を圧倒的な強さで勝ち抜くことになるブラジルと歴史に残る好ゲームを展開。ムーアはブラジルの強力攻撃陣をクリーンな守備で苦しめ、試合後には“王様”ペレから真っ先に握手を求められたほどだった。
これがムーアにとって最後のW杯となり、74年西ドイツ大会の予選で伏兵ポーランドに出場権を奪われると、彼は108試合という当時では歴代最多のキャップ数を記録して代表ユニホームを脱いだ。現在この記録は5位だが、キャプテンとしての出場数90は現在も最多タイの数字である。
前述の通り、83年で現役引退。以降、国内の下部リーグ所属のクラブや香港のチームを率いたが、その選手としての輝かしき実績や人望の厚さにもかかわらず、FA(イングランド・サッカー連盟)の要職に就くことはなく、自国のサッカーファンからは不満や抗議の声が上がったこともあった。
93年2月24日、大腸や肝臓のガンによって51歳という若さで逝去。国中が悲しみに暮れ、ウェストハムは以降、節目の年にレジェンドの追悼イベントを行なっている。そして、各所に設けられた銅像やプレートはいつまでもムーアの偉業を称え、偉大なキャプテンは人々の記憶のなかで永遠に生き続けている。
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