それもあってか、森保監督は60分あたりから立て続けに選手を入れ替えました。前線の選手が交代した後にすぐ２得点が生まれたのは偶然ではないでしょう。得点以外にも何度も流動的な攻撃が見られました。流動性を引き出したのは、大迫選手です。
 
　サッカーにおいて流動的な動きはとても大切です。しかし、「流動的にプレーしよう」と言うだけで流動的にできるほど攻撃は簡単ではありません。
 
　ポイントとなるのは、起点となる選手の早い動き出しです。大迫選手はボールが展開していく時にはすでに、その先で起点になるためのポジションを取るために動き出していました。すると、自然に最前線には人がいない状況になります。大迫選手の動きにつられず相手選手が動かなければ大迫選手が起点になり、逆につられて動けば中島選手、南野選手、堂安選手のいずれかの内、そのスペースが見えたものが利用する。そして、他の選手がまたその次のスペースを使う。といった具合に大迫選手の早い動き出しに対し、シャドーの３人が次々に連動する形で「流動性」が出来上がっているので、再現性高く何度も流れるように攻撃が行なわれました。
 

　森保監督になられて間も無く、連係を図る時間がなかったのにも関わらず、こんなにも早く前線の４人のセットが流動的に動けているのは、大迫選手の早い動き出しによるところが大きいと思います。
 
　個人に目を向けると、代表デビュー２分で初ゴールを奪って見せた山中選手はもちろんのこと、代表初スタメンとなったボランチの守田選手も見事な働きぶりだったと思います。
 
　特に、他の選手がボールを奪いに行った時のセカンドディフェンダーとしてのポジショニングが素晴らしく、今後、その地位を高めていく期待を持ちました。誰と組んでも相方を生かし、自分も生かされるタイプの選手だと思います。
 
　アジアカップに向けて、ひとまず順調すぎるほどの仕上がりでしょう。アジアカップでは、かなりの成績を残してくれるはずです。
 
　キルギス戦の展開から、きっと不安材料として様々なところでバックアップの選手の問題が取り上げられるのでしょうが、この時期で不安材料がバックアップのことであること自体がすでに不安材料とは言えません。４年後のワールドカップは別にして、１月のアジアカップに関してはほぼチームは固まったと言っていいわけで、あとはこれから残りの少しのピースをどう埋め合わせるかだけの問題です。

　この残りのピースには「ジョーカー」を入れておくのか、はたまたアジアカップは連戦となることを考えて純粋に似たタイプの「バックアップ」を置くのか。
 
　流れを敏感に察知する監督さんです。残りの期間で一気にアジアカップメンバーに滑り込んでくる選手も出てくるかもしれません。
 
【著者プロフィール】
岩政大樹（いわまさ・だいき）／1982年１月30日、山口県出身。鹿島で不動のＣＢとして活躍し、2007年からＪ１リーグ３連覇を達成。2010年の南アフリカW杯メンバーにも選出された。東京ユナイテッドFCで選手兼コーチを務めていたが、今季限りでの現役引退を発表した。