「何回もゴール前でしくじった。けど…」
ここからはもう誰の手にも終えなくなり、66分、69分、74分と怒涛のラッシュを決め込んだ。とりわけ光ったのは、トドメとなった自身4点目のシーンだ。
ゴール前で決定機を得たエムバペは、ネイマールにチャンスを譲るも、出したパスが自分の足下に舞い戻ってしまう。最後はまるで、「仕方がない」といった風にフィニッシュしたのだが、天才とは、ボールを離さない者ではなく、ボールを引きつけてしまう者なのだろう。そう思わせる光景だった。
ゴール前で決定機を得たエムバペは、ネイマールにチャンスを譲るも、出したパスが自分の足下に舞い戻ってしまう。最後はまるで、「仕方がない」といった風にフィニッシュしたのだが、天才とは、ボールを離さない者ではなく、ボールを引きつけてしまう者なのだろう。そう思わせる光景だった。
この活躍に、試合を中継していたフランスのテレビ局「Canal+」のゲスト陣は、口を揃えて「信じられない!」を連発。さらにマン・オブ・ザ・マッチに選出された試合後インタビューでは、辛口コメンテーターとして有名なピエール・メネス氏が「トロフィーを置く場所がないんじゃないの?」と、ツッコミをいれてもいた。
しかし、そうした周囲の反応とは裏腹に、エムバペ自身は至って冷静だ。「ネイマールや僕のことがよく話題になるけど、チームが最も重要なんだよ」とキッパリ返してみせた。
「何回もゴールをしくじった。けど、本当に高いところに行くために僕が踏み越えるべきステップはここにあると思う。あと、チームメイトのみんなに助けられた。でも一度も疑念にはとらわれなかったよ」
先月のニーム戦(リーグ・アン4節)での一発退場で出場停止処分を受け、うつむきがちだった怪童にようやく笑顔が戻り、フランス全土も笑顔になった――。まさにそんな夜だった。
文●結城麻里