「何回もしくじった。けど…」 史上最年少の得点記録を樹立したエムバペが見せる怪童の矜持【現地発コラム】

カテゴリ:メガクラブ

結城麻里

2018年10月08日

仇敵との遺恨を晴らした怪童

怒涛のゴールラッシュを披露したエムバペ。そのプレーは堂々たるものだった。 (C) Getty Images

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 現地時間10月7日の夜、パリ・サンジェルマンの“怪童”キリアン・エムバペは、強豪リヨン相手に大爆発した。

 61分からの13分間でリーグ・アンの過去45年では初となる1試合4ゴールの最年少記録を樹立し、エムバペは19歳らしい爽やかな笑顔を取り戻したのである。

 大記録を打ち立てたこの日、キックオフ直後の動きは微妙だった。

「リーダーはネイマール」と決めたトーマス・トゥヘル監督の方針を尊重するエムバペは、自分で決められるシーンもあえてネイマールにパスをし、積極性に欠け、そして7分には、問題のシーンを迎えた。

 ペナルティーエリア内で得意のドリブル突破を披露した直後、自身に向かって突進してきたリヨンの守護神アントニー・ロペスと衝突したのだ。

 結局、これでPKを獲得し、ネイマールの先制点を呼び込んだのだが、“問題”とは、接触した相手がロペスだった点にある。

 実は、エムバペは、昨シーズンにロペスの危険な飛び出しによる接触プレーで脳震盪を起こした経緯があるのだ。一歩間違えば天才のキャリアを台無しにしかねなかった危険なシーンであり、当時はフランス中が胆を冷やしたものだった。

 その影響から本人も脳の精密検査に時間を費やし、小さなトラウマを背負っていた。今回のロペスの異常な飛び出しも、「エムバペのトラウマをえぐろうとしたのでは?」と思わせるものだった。

 事実、この7分のプレーからエムバペは、4回連続でビッグチャンスを逸し、徐々に眉をひそめるようになっていった。それとは対照的にロペスは、撫でつけた髪の下でニヤリとしたり顔だ。普通の若者ならこれで気が滅入るところだが、エムバペは違った。

「仇敵ロペスが守る鬼門をこじ開けて絶対に勝つ」――そう決意したかのように表情を引き締め直したエムバペは、チームメイトからの援助もあり、61分にこぼれ球からのシュートでロペスの牙城を崩したのである。

 ゴールの直後、エムバペは両手で何度も胸から腹までをなで降ろし、「やったぞ、スッキリしたぜ!」の雄叫びを上げていた。遺恨を晴らした瞬間でもあった。

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