だからこそ、批判を受ける覚悟もし、「ああいうことはやってはいけない」という思いを抱きつつも、指揮官は最後の時間に天野をピッチへ送り出す決断を下した。
決して大宮を侮ったとか、そういうことではない。むしろ後半の反撃ぶりに恐怖感すら覚えながら、頑張ってきた３年生に全国大会のピッチを踏ませてあげたいという気持ちも揺らがなかった。
梅田もまた「今の自分があるのは天野に負けないようにやってきた結果」とライバルとの交代に納得の表情だった。昨年のＵ-17ワールドカップの代表に選ばれたが、まったく謙虚さや危機感を失わなかったのも天野がいたからこそ。大会のMVPにも輝いた名手の陰には、もうひとりの名手がいた。
取材・文●川端暁彦（フリーライター）
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