繰り返せばチーム力は落ち、墓穴を掘る
昨シーズン、ヨーロッパリーグ決勝に進出したアトレティコ・マドリーは、11-12シーズンにも決勝の舞台に立っているが、その時の先発の5人が現在も、主力として名を連ねている。その間、4シーズンで2度もCL決勝に進出した他、ベスト4、ベスト8を経験。主力を固めて、結果を叩き出したのだ。
昔のアトレティコは、編成が奔放すぎるクラブだった。毎年どころか、毎月のように監督を代え、選手をシャッフルする……。これでは、チーム力が身につくわけはなかった。
昔のアトレティコは、編成が奔放すぎるクラブだった。毎年どころか、毎月のように監督を代え、選手をシャッフルする……。これでは、チーム力が身につくわけはなかった。
2011年12月に監督に就任したディエゴ・シメオネには、このクラブの「病巣」が見えていた。そして、選手を変えず、闘志を燃やさせ、チームとして一体になって戦うという空気を作り上げた。それによって、今の栄光をもたらしたのである。
うまくいかないチームには、手を入れる必要がある。チームにダメージをもたらすような選手は要らない。補強が必要なポジションもあるはずだ。
しかし、全てを変えるような編成は、“やけっぱち”に近い。偶然的に噛み合い、うまくいくこともあるが、それは万馬券を的中させるほどの確率に近い。そして、うまくいかないからといって改造を繰り返せば、そのたびにチーム力は落ち、墓穴を掘る。本当の問題は、改造していること自体にあるのだ。
「チーム大改造」
その響きには、危うさしかない。
日本代表も新陳代謝を図りながら、継続路線を敷くべきだ。
文:小宮 良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。