W杯 日本代表総括|良き指導者であっても勝負師ではなかったザッケローニ監督の限界

カテゴリ:日本代表

原山裕平

2014年06月30日

経験不足によるものか、プレッシャーが原因か。

個の能力に差があったとはいえ、ザッケローニ監督の采配に大きな疑問が残ったのも事実だ。 (C) SOCCER DIGEST

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 ただし、良き指導者と結果を出せる監督は、イコールでは結ばれない。ワールドカップでのザッケローニ監督の立ち居振る舞いを見る限り、この監督には勝負師としての絶対的な能力が欠けているように感じた。とりわけギリシャ戦の采配には大きな疑問が残った。

【写真で振り返る】ギリシャ戦
 
 勝たなければいけない一戦で、ザッケローニ監督は勝負どころを見極められなかった。10人となった相手が守りを固めて引き分け狙いに徹するなか、日本は単調な攻撃を繰り返し、あっさりと撥ね返されるばかりだった。膠着状態が延々とつづいても、ザッケローニ監督は手元に一枚残ったカードを切ることなく、まるで傍観者のようにドローという結果を受け入れている。
 
 DFもしくはボランチを一枚削り、攻撃的な選手を投入する選択肢はあったはずだ。しかし、指揮官はリスクを冒すことをためらった。もちろん、リスクを負えば、10人とはいえカウンターを得意とするギリシャに不覚をとった可能性もある。そうなれば、その時点で大会は終わっていた。ザッケローニ監督はその危険性を恐れ、勝負をかけられなかったのだ。
 
 また一部の主要メンバーに固執した点も、明らかなマネジメントミスだった。決して本調子ではなかった本田圭佑に免罪符を与え、怪我明けで90分間満足にプレーできない状態だった長谷部を全試合にスタメン出場させている。それでも彼らを起用しつづけたのは、代役を担える選手が不在だったからだ。
 
 11年のアジアカップ以降、主力の顔触れはほとんど変えず、たとえ親善試合でも新戦力のテストより、主力のコンディション確認に重きを置いてきた。一部の主力への固執が、自身の采配の幅を狭める結果を招いてしまった。
 
 たしかにスタイルを築き、方向性を示すことはできた。そして選手たちに「自分たちのサッカー」という自信を植え付けたのは、ザッケローニ監督の功績だ。しかし、ワールドカップのような短期決戦では、勝負どころを見極め、正しい決断を下せる采配力が監督には求められる。イタリア人指揮官は、どこか平静さを失っていたようだった。
 
 試してこなかったパワープレーを仕掛けたのは、その象徴だろう。経験不足によるものか、それともプレッシャーに苛まれたのか。いずれにせよ、この大きな舞台で、彼は勝負師に徹し切れなかった。それはワールドカップを知らない監督の限界だった。

取材・文:原山裕平(週刊サッカーダイジェスト)

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