サッカー界に「愛され度」を競う賞があれば…。
イニエスタは他人に優しく自分に厳しい人間だ。だからこそ自分を騙すような行為は絶対にできなかったし、それが愛するクラブであればなおさらだった。彼はバルサと距離を置かなければならないと考えた。
長年の疲労蓄積はもちろんあっただろう。いまの心身の状態では、たとえばコパ・デル・レイ決勝のセビージャ戦のようなパフォーマンスを、シーズン通して見せることはできないと彼は悟ったのだ。
イニエスタはひと昔前の職人気質の選手でもある。彼にとってボールは唯一にして最大のコミュニケーションツールだ。だからこそ、ボールを汚すようなマネは絶対にせず、常にリスペクトを持ってプレーしつづけた。
そんな彼には真っ白なボールがよく似合う。イニエスタが黄金色に光り輝くバロンドールをついに受賞できなかったのは、それがひとつの理由なのかもしれない。
長年の疲労蓄積はもちろんあっただろう。いまの心身の状態では、たとえばコパ・デル・レイ決勝のセビージャ戦のようなパフォーマンスを、シーズン通して見せることはできないと彼は悟ったのだ。
イニエスタはひと昔前の職人気質の選手でもある。彼にとってボールは唯一にして最大のコミュニケーションツールだ。だからこそ、ボールを汚すようなマネは絶対にせず、常にリスペクトを持ってプレーしつづけた。
そんな彼には真っ白なボールがよく似合う。イニエスタが黄金色に光り輝くバロンドールをついに受賞できなかったのは、それがひとつの理由なのかもしれない。
イニエスタのプレーはいつもシンプルだ。その根底にはつねにフォア・ザ・チームの精神が宿っている。商業化、ショーアップ化、グローバル化がますます加速する昨今のサッカー界において、彼のそんな真っすぐさは極めて貴重な存在だ。
だからこそイニエスタは、だれからも愛される。ライバルのレアル・マドリーにも友人は多い。スタジアムではホーム、アウェーを問わず毎週多くのファンから拍手を受ける。仮にサッカー界に「愛され度」を競う賞があるとすれば、イニエスタは毎週トロフィーを勝ち取ることだろう。
退団発表の日のプレスルームは、かつてないほどの多くの人間でごった返していた。そしてイニエスタが話を始めると、その場は感謝と称賛の気持ちに支配された。彼は重荷から解放された部分もあったかもしれない。イニエスタがバルサで獲得したタイトルの数はメッシと同じ32。だが彼は、バルサでタイトルのコレクションを増やすことよりも、晩節を汚さない道を選択した。
記者会見後、イニエスタはバルサのレジェンドになった。かつてのチームメイトであり友人でもある、カルレス・プジョール、シャビ、ビクトール・バルデスらと同様に。誠実を絵に描いたような男は、プレー同様、涙の流し方も誠実そのものだった。
マシアが輩出したソリストはだれもが唯一無二の特徴を持っているが、その中でもイニエスタは、とりわけ特別な“演奏家”だった。オーケストラが演奏を終えると、マエストロは静かに去っていった。
文●ラモン・ベサ(エル・パイス紙/バルセロナ番記者)
翻訳:下村正幸
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。
だからこそイニエスタは、だれからも愛される。ライバルのレアル・マドリーにも友人は多い。スタジアムではホーム、アウェーを問わず毎週多くのファンから拍手を受ける。仮にサッカー界に「愛され度」を競う賞があるとすれば、イニエスタは毎週トロフィーを勝ち取ることだろう。
退団発表の日のプレスルームは、かつてないほどの多くの人間でごった返していた。そしてイニエスタが話を始めると、その場は感謝と称賛の気持ちに支配された。彼は重荷から解放された部分もあったかもしれない。イニエスタがバルサで獲得したタイトルの数はメッシと同じ32。だが彼は、バルサでタイトルのコレクションを増やすことよりも、晩節を汚さない道を選択した。
記者会見後、イニエスタはバルサのレジェンドになった。かつてのチームメイトであり友人でもある、カルレス・プジョール、シャビ、ビクトール・バルデスらと同様に。誠実を絵に描いたような男は、プレー同様、涙の流し方も誠実そのものだった。
マシアが輩出したソリストはだれもが唯一無二の特徴を持っているが、その中でもイニエスタは、とりわけ特別な“演奏家”だった。オーケストラが演奏を終えると、マエストロは静かに去っていった。
文●ラモン・ベサ(エル・パイス紙/バルセロナ番記者)
翻訳:下村正幸
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