二度の監督交代もあって、出番を失なう時期もあった伊藤だが、ユース時代の恩師クリスティアン・ティッツの監督就任が転機となる。チーム内での立場を取り戻し、直近の４試合はすべて先発出場。そして、先週末のヴォルフスブルク戦の活躍につなげたのだ。試合後、酒井は期待を込めて伊藤をこう評した。
 
「頼もしいですね。いまやうちのチームの武器かな、と思うし、自信を持ってプレーしているところがいい。前半２点に絡んですごく褒めたんですよ。でもまだ若いし、成長できる時間はたくさんある。こういうときだからこそ、しっかり言い聞かせないとだめかなとも思って、『お前が上（のチーム）に行きたいならこれからだぞ。ここでお前がどれだけ守備ができるか、もっと攻撃で脅威になり続けられるかとか、そうしたところが大事になってくる。後半なにもなくなったら、なんの意味もなくなっちゃうからな』と言いました。結果、後半も頼もしいプレーを見せてくれましたね。チームとして嬉しい人材になったな、と思います」

 

　チームは現在17位ながら、すぐ上のヴォルフスブルクとの勝点差は２にまで縮まった。相手が２連勝してしまえばそれまでだが、16位になってプレーオフ（２部・３位との入れ替え戦）で勝つという筋書きが見えてきた。
 
　今シーズンの出場は「１分でもいい」と考えていた伊藤が、残る２試合＋プレーオフ２試合でチームを残留に導くことができれば……。その時は、「HSVからふたりの日本代表選手がワールドカップへ」なんてことがあるかもしれない。
 
取材・文●了戒美子