前回王者の敗北はショッキングではあったが、監督のセサル・ルイス・メノッティが４年前の栄光を忘れられず、４つずつ歳を重ねて衰えが見え始めた選手たちに頼りすぎたことによる、必然の結果でもあった。この後、アルゼンチンは１次リーグを突破するものの、２次リーグではイタリア、ブラジル相手に大きな失望を味わうこととなる。希望を持って初めての大舞台に臨んだマラドーナは、試合のたびにラフなマークに痛めつけられ、最後はブラジル戦での報復行為による退場という最悪のエンディングを迎えるのだった。
 
　アルゼンチンは４年後のメキシコ大会で、マラドーナの魔法のプレーにより世界王者に返り咲くが、続く90年イタリア大会の開幕戦では再び、カメルーンのジャイアントキリング（０-１）を許してしまう。ちなみにこれ以降で、前回王者が敗れ去ったのは、現時点で2002年日韓大会でのフランスだけである（セネガルに０-１）。
 
　94年大会以降、勝点制度が変更され（勝利の勝点が２から３へ）各国が勝利にこだわるようになったこともあり、開幕戦での引き分けは前回南アフリカ大会の南アフリカ対メキシコ戦のみ。また、06年ドイツ大会より開幕戦には再び開催国が登場するようになった。
 
　そして開幕したブラジル大会。開幕戦では、ブラジルがクロアチア相手に順当すぎる勝利を飾ったのだった。
 
――◆――◆――
 
　他では、86年大会で旋風を巻き起こしたデンマークが西ドイツを下してグループリーグ全勝を飾り、ウルグアイ対スコットランド戦では開始１分でウルグアイに退場者が出るなど、大荒れの試合となった。90年大会のアルゼンチン対ソ連戦ではマラドーナが再び「神の手」でソ連のシュートをブロック。98年には“無敵艦隊”スペインが初戦でナイジェリアに敗北を喫してグループリーグ敗退への道を突き進んでいく。そして02年大会のメキシコ対イタリア戦では、85分にイタリアがアレッサンドロ・デル・ピエロのヘッドで追いつき、土壇場で決勝トーナメント進出を決めた。
 
 
◆６月13日に行なわれた過去のW杯の試合
 
1960年チリ大会
「準決勝」
チェコスロバキア　３-１　ユーゴスラビア
ブラジル　４-２　チリ
 
1974年西ドイツ大会
「１次リーグ」
ブラジル　０-０　ユーゴスラビア
 
1982年スペイン大会
「１次リーグ」
アルゼンチン　０-１　ベルギー
 
1986年メキシコ大会
「グループリーグ」
西ドイツ　０-２　デンマーク
ウルグアイ　０-０　スコットランド
 
1990年イタリア大会
「グループリーグ」
アルゼンチン　２-０　ソ連
ウルグアイ　０-０　スペイン
 
1998年フランス大会
「グループリーグ」
スペイン　２-３　ナイジェリア
韓国　１-３　メキシコ
オランダ　０-０　ベルギー
 
2002年日韓大会
「グループリーグ」
コスタリカ　２-５　ブラジル
トルコ　３-０　中国
メキシコ　１-１　イタリア
エクアドル　１-０　クロアチア
 
2006年ドイツ大会
「グループリーグ」
ブラジル　１-０　クロアチア
韓国　２-１　トーゴ
フランス　０-０　スイス
 
2010年南アフリカ大会
「グループリーグ」
アルジェリア　０-１　スロベニア
セルビア　０-１　ガーナ
ドイツ　４-０　オーストラリア