バラクが生まれたのは、チェコ中部のプジーブラムという小さな町。中世から銀や鉄鉱石の産地として知られたその故郷は、経済的に衰退して久しいが、バラクという新たな原石を輩出した。

　チェコ国内で名の知れた指導者だった父の影響で、アントニン少年は早にサッカーを始めた。腰の奇形に悩まされていたが、プロフットボーラーになるという夢を叶えるために根気強く治療して克服。地元クラブのプジーブラムの育成部門で腕を磨き、18歳でプロデビューを飾った。

　その後、２部のクラブへのレンタルを経て、16年１月に首都の名門スラビア・プラハに引き抜かれる。ここで加入初年度から主力となり、16年11月にはフル代表デビュー。16－17シーズンにはスラビア・プラハを８年ぶりのリーグ優勝へ導いた。そして、その才能にいち早く目をつけたウディネーゼが17年１月に保有権を買い取り、今シーズンからセリエＡでプレーしている。

　おそらく予想以上であろうここまでの活躍を受けて、ウディネーゼでチーフスカウトを務めるアンドレア・カルネバーレはこう確信している。
「（バラクは）早ければ今年の夏、遅くとも来年夏までにはかなりの高額で売れる」


 

　実際、すでにミラノ勢やユベントスなど国内のビッグクラブが熱視線を注いでいる。今後は国外のクラブも争奪戦に加わってくるかもしれない。

　本人はアーセナルのファンだと公言しているが、ボールタッチや戦術的な動きなどは、バルセロナの「伝説」アンドレス・イニエスタを手本にしているという。

バルセロナといえば、７年前にアレクシス・サンチェス（現マンチェスター・U）が、2600万ユーロ（約33億8000万円）でウディネーゼからこのスペインの超名門に大出世の移籍を果たした前例がある。バラクもこのチリ人スターに続く可能性は十分ある。

　いまはまだ原石だが、その才能は着実に磨かれ輝きはじめている。このまま成長を続ければ、銀どころか「黄金」に化けるかもしれない。

文：弓削高志

※ワールドサッカーダイジェスト2018.3.15号より加筆・修正