「動かない監督」は大胆に動き回り。
コパ・デル・レイで大失態(ベスト8で格下のレガネスに敗退)を演じた控え組の中からL・バスケスを救い出す一方で、昨年8月のバルセロナとのスーペルコパで鮮烈な輝きを放って以来、長く沈黙していたアセンシオを再登用。さらにこれまで以上に頻繁に休養を与えつつ、C・ロナウドの復活を待った。
12月のクラシコでリオネル・メッシのマンマークという大役を与えた采配が、惨敗を招く原因だと強い批判を浴びたコバチッチに、カゼミーロのパートナー役という異なる役割を与え、ふたたび大一番で先発起用している。
12月のクラシコでリオネル・メッシのマンマークという大役を与えた采配が、惨敗を招く原因だと強い批判を浴びたコバチッチに、カゼミーロのパートナー役という異なる役割を与え、ふたたび大一番で先発起用している。
クロース、モドリッチというふたりの中盤の要を失う緊急事態に直面しても、あるいは先週末のリーガ・エスパニョーラ27節のアラベス戦でBBCが約2年ぶりに揃い踏みを果たしても、ジダンの信念はブレることがなかった。
ちなみにL・バスケスとアセンシオの今シーズンの出場試合数は、チームでも上位にランクされる(ともに39試合で1位)。出場時間になると事情は大きく異なるが(アセンシオが13位、L・バスケスが14位)、そんなふたりを大一番に抜擢したのは決して偶然ではないはずだ。
たしかに、金満溺れのパリSGの不甲斐なさに助けられた部分はあった。しかしこの日、マドリーが一丸となって攻守一体の高い組織力を示し、相手を圧倒できたのは、ジダンの確固たる覚悟を持った采配が、チームに乗り移ったからに他ならない。
温和な人柄で、「動かない監督」のイメージが定着していたジダンが、今回はベンチ前を大胆に動き回り、喜びや怒りといった感情を、身体全体で表現することでチームを活性化させた。
“勝負師ジダン”は我々にとっては新たな発見だ。これは彼の中で、これまでの「マネジャー」としての側面に加え、戦術家としての潜在能力が覚醒している証左かもしれない。選手にとってもクラブにとっても、指揮官のこの変化は頼もしい限りだろう。
ジダンの采配は、カネではすべてを解決できないフットボールという競技の本質を体現するものでもあった。パリSGは今回の経験を心に刻み、今後の教訓としていく必要がある。
文●ホセ・サマノ(エル・パイス/レアル・マドリー番記者)
翻訳:下村正幸
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。
ちなみにL・バスケスとアセンシオの今シーズンの出場試合数は、チームでも上位にランクされる(ともに39試合で1位)。出場時間になると事情は大きく異なるが(アセンシオが13位、L・バスケスが14位)、そんなふたりを大一番に抜擢したのは決して偶然ではないはずだ。
たしかに、金満溺れのパリSGの不甲斐なさに助けられた部分はあった。しかしこの日、マドリーが一丸となって攻守一体の高い組織力を示し、相手を圧倒できたのは、ジダンの確固たる覚悟を持った采配が、チームに乗り移ったからに他ならない。
温和な人柄で、「動かない監督」のイメージが定着していたジダンが、今回はベンチ前を大胆に動き回り、喜びや怒りといった感情を、身体全体で表現することでチームを活性化させた。
“勝負師ジダン”は我々にとっては新たな発見だ。これは彼の中で、これまでの「マネジャー」としての側面に加え、戦術家としての潜在能力が覚醒している証左かもしれない。選手にとってもクラブにとっても、指揮官のこの変化は頼もしい限りだろう。
ジダンの采配は、カネではすべてを解決できないフットボールという競技の本質を体現するものでもあった。パリSGは今回の経験を心に刻み、今後の教訓としていく必要がある。
文●ホセ・サマノ(エル・パイス/レアル・マドリー番記者)
翻訳:下村正幸
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