浅野の我慢の時は続くかもしれないが…
ハノーファー時代にもタイフン監督の下でプレーしたGKロン=ロベルト・ツィーラーは、「大事なのは、僕らがチームとしてやっていくこと。監督は人間的に素晴らしいし、戦術的にも良いアイデアをもたらしてくれる」と称賛している。
そんなタイフン監督の指導者としてのあり方は、3人の世界的な監督の下でプレーした経験が大きいようだ。
「私は選手時代、ヨアヒム・レーブ、ビンセンテ・デルボスケ、カルロス・アルベルト・パレイラと、3人のワールドカップを制した監督の下でプレーしていたことがある。3人に共通しているのは、チーム以上の存在になろうとはしなかったことだ」
また、ハノーファーやレバークーゼンなど、これまでにタイフンが監督を務めていたクラブでは、常に首脳陣から、人間性やコミュニケーション能力について高く評価されてきていた点にも注目しなければならない。
「それに関しては、両親から多くを学んだ。ドイツに移り住んでからの毎日は、簡単ではなかったはずだ。でも両親は、そこでハードに働き、戦い抜いてきた。そのなかで自分を律し、規律を守り、正直で公正に生きてきた両親の姿は、私の模範なんだ」
さて、チームが復調していくなか、浅野琢磨の現在地はどうなのだろうか。
後半戦、浅野琢磨は出場機会に恵まれていない。ビルト紙からは「失墜した4人」のひとりとして紹介されたこともあった。
堅守速攻がベースのチームにおいては、守備での貢献とスピードを活かした攻め上がり、そして少ないチャンスから決定機を生み出すことが求められる。攻撃に転じた時のタイミングとコース取り、ボールを受けた時の最適な判断力……。
現在、出場している選手は、チーム内での規律を守りながらも、自分の特徴を出してゴールへの道を作り出している。
スピードだけならば、浅野がチーム内でも屈指の存在なのは間違いない。突破力に磨きをかけ、練習からゴールに直結する動きの質を上げていく。ポジション争いを勝ち抜くには、そうした積み重ねで監督の信頼を得ていくしかない。
フランクフルト戦では、久しぶりにメンバー入りを果たした。まだ我慢の時は続くかもしれない。だが、ひとつのゴールやアシストで、チーム内の立ち位置をガラリと変えられる。出場機会が訪れたその時に、チャンスを活かし切ってみせたい。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。
そんなタイフン監督の指導者としてのあり方は、3人の世界的な監督の下でプレーした経験が大きいようだ。
「私は選手時代、ヨアヒム・レーブ、ビンセンテ・デルボスケ、カルロス・アルベルト・パレイラと、3人のワールドカップを制した監督の下でプレーしていたことがある。3人に共通しているのは、チーム以上の存在になろうとはしなかったことだ」
また、ハノーファーやレバークーゼンなど、これまでにタイフンが監督を務めていたクラブでは、常に首脳陣から、人間性やコミュニケーション能力について高く評価されてきていた点にも注目しなければならない。
「それに関しては、両親から多くを学んだ。ドイツに移り住んでからの毎日は、簡単ではなかったはずだ。でも両親は、そこでハードに働き、戦い抜いてきた。そのなかで自分を律し、規律を守り、正直で公正に生きてきた両親の姿は、私の模範なんだ」
さて、チームが復調していくなか、浅野琢磨の現在地はどうなのだろうか。
後半戦、浅野琢磨は出場機会に恵まれていない。ビルト紙からは「失墜した4人」のひとりとして紹介されたこともあった。
堅守速攻がベースのチームにおいては、守備での貢献とスピードを活かした攻め上がり、そして少ないチャンスから決定機を生み出すことが求められる。攻撃に転じた時のタイミングとコース取り、ボールを受けた時の最適な判断力……。
現在、出場している選手は、チーム内での規律を守りながらも、自分の特徴を出してゴールへの道を作り出している。
スピードだけならば、浅野がチーム内でも屈指の存在なのは間違いない。突破力に磨きをかけ、練習からゴールに直結する動きの質を上げていく。ポジション争いを勝ち抜くには、そうした積み重ねで監督の信頼を得ていくしかない。
フランクフルト戦では、久しぶりにメンバー入りを果たした。まだ我慢の時は続くかもしれない。だが、ひとつのゴールやアシストで、チーム内の立ち位置をガラリと変えられる。出場機会が訪れたその時に、チャンスを活かし切ってみせたい。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。