もっとも、バルサのエルネスト・バルベルデ監督もその試合は研究済みのはずで、あの苦戦の二の舞を演じるつもりはないだろう。

　クリスマス休暇以来はじめて１週間のインターバルを経たチームには、前節出場停止だったサミュエル・ウンティティと故障の癒えたジェラール・ピケが帰って来る。つまりバルサは、主力にケガ人も累積警告者もおらず、ベストメンバーが組める状態なわけだ。

　加えて、乾とマッチアップするバルサの右サイドの守備力は、あの２ゴール時と比べて大幅に向上した。

　４-３-３システムを採用していた昨シーズンは、３トップの右に入っていたメッシが守備をせず、乾に圧倒された右SBのセルジ・ロベルトが前半だけで交代させられたのは記憶に新しいところだが、今シーズンは４-４-２が主流。右サイドはフィジカルの強いパウリーニョと右SBで守る形が主流で、おそらくエイバル戦も、脅威である乾を止めるためにバルサはこのシステムを採用してくるだろう。
 
　乾と対峙するだろうパウリーニョの持ち味は、パスワークではなく裏への飛び出しだ。相手が前からプレスを掛けてきた場合でも、ボールポゼッションにこだわるか、それともこだわらないか。バルベルデは、おそらく「こだわらない」だろう。ピケ、ラキティッチ、あるいは中盤に下りてきたメッシからのパスで、パウリーニョを裏へ飛び出させる、シンプルでカウンターを浴びるリスクが少ないやり方を選択するはずだ。
　
　ネイマール喪失をプラスに変える４-４-２への変更で、23節終了時の失点がわずか11と昨シーズンの同時期より８点少なく、勝点は８ポイント多い。堅守のチームを作り上げたバルベルデは、バルサ出身者特有のロマン派ではなく、論理と実利を優先する監督なのだ。
 
　以上のことから言えるのはつまり、乾とパウリーニョのいるサイドの主導権争いが、勝負の分かれ目となる可能性が極めて高いということだ。乾はホセ・アンヘルとの、パウリーニョはセルジ・ロベルトとの連係によって、どちらがどれだけ相手を押し込めるか、どちらがどれだけ相手に守備をさせるか、どちらがどれだけ攻撃の持ち味を発揮するか。

　乾の挑戦とは、単独でバルサに挑むことではない。「メンディリバル監督の戦術vsバルベルデ監督の戦術」、「乾＋ホセ・アンヘルvsパウリーニョ＋セルジ・ロベルト」というふたつの勝負に勝利するために、乾がいかに貢献できるか、である。

　もしそのふたつでエイバルが勝利を収めたなら、乾はふたたびゴールを奪い、スペイン人を驚嘆させるかもしれない。
 
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