冬に大物クラックの獲得を断行するのか。
このような状況下、バルベルデ監督はバルサ伝統の4-3-3からMFをひとり増やした4-4-2にシステムを変え、得点力よりポゼッションと守備の安定を重視する戦い方で手堅く勝点を積み重ねてきた。
だが、強豪との対戦が続いた最近は、それだけでは勝ちきれない試合が増えている。
アトレティコ戦は1-1で、CLのオリンピアコス戦とユベントス戦はどちらもスコアレスドロー、そしてバレンシアとの頂上決戦も1-1だった。10月の代表ウイーク明け以降、6つのアウェーゲームのうち4試合に引き分け、そのうち2試合は無得点に終わっている。
14節には、リーガでは昨年12月のクラシコ以来ずっと勝ち続けてきたホームのカンプ・ノウでもセルタと2-2で引き分けた。そして、前述した4試合と比べ、多くのチャンスを作り出すことができていたこの試合では、新たな問題が発生している。守備面で際立ったパフォーマンスを維持してきたサミュエル・ウンティティがハムストリングの肉離れを起こし、2か月の離脱を強いられたのだ。
昨シーズンまでのバルサなら、守備の不安は圧倒的な攻撃力でカバーすることができた。だが、すでに勝ちきれない試合が増えている中、堅守を支えてきた最終ラインの要を失った影響は、これから確実に出てくるだろう。
そうでなくとも攻撃の駒不足は明らかで、クラブは1月の補強に向けて動く必要がある。すでに地元紙には、獲得候補としてフィリッペ・コウチーニョ、アントワーヌ・グリエーズマン、アンヘル・ディ・マリア、メスト・エジルらの名前が挙がっているが、本命はコウチーニョだ。崩しの局面における意外性溢れるプレーと周囲との連携能力、1対1の突破力など、今シーズンのチームに欠けている要素をすべて兼ね備える彼は、いまのバルサにとって理想的な戦力なのだ。
問題は、昨夏に頑なに放出を拒んだリバプールが、1億4500万ユーロ(約188億5000万円)もの移籍金を要求していること。ネイマールの売却益として2億2200万ユーロ(約288億6000万円)を得たものの、今夏バルサはデンベレ、パウリーニョ、ネウソン・セメド、デウロフェウの獲得に合計1億8700万ユーロ(約243億1000万円)を費やしている。
“ネイマール・バブル”の影響で市場価格が高騰している現状、この冬にビッグネームの補強に動くのは得策とは言えないが、それでもバルサは大金を費やして大物クラックの獲得を断行するのか。
もっとも、失われた攻撃力とスペクタクル性を取り戻すためには、現時点で他に選択肢はなさそうだが。
文●工藤 拓
【著者プロフィール】
1980年、東京都生まれ。桐光学園高、早稲田大学文学部卒。三浦知良に憧れて幼稚園からボールを蹴りはじめ、TVで欧州サッカー観戦三昧の日々を送った大学時代からフットボールライターを志す。その後EURO2004、W杯ドイツ大会の現地観戦を経て、2006年よりバルセロナへ移住。現在は様々な媒体に執筆している。
だが、強豪との対戦が続いた最近は、それだけでは勝ちきれない試合が増えている。
アトレティコ戦は1-1で、CLのオリンピアコス戦とユベントス戦はどちらもスコアレスドロー、そしてバレンシアとの頂上決戦も1-1だった。10月の代表ウイーク明け以降、6つのアウェーゲームのうち4試合に引き分け、そのうち2試合は無得点に終わっている。
14節には、リーガでは昨年12月のクラシコ以来ずっと勝ち続けてきたホームのカンプ・ノウでもセルタと2-2で引き分けた。そして、前述した4試合と比べ、多くのチャンスを作り出すことができていたこの試合では、新たな問題が発生している。守備面で際立ったパフォーマンスを維持してきたサミュエル・ウンティティがハムストリングの肉離れを起こし、2か月の離脱を強いられたのだ。
昨シーズンまでのバルサなら、守備の不安は圧倒的な攻撃力でカバーすることができた。だが、すでに勝ちきれない試合が増えている中、堅守を支えてきた最終ラインの要を失った影響は、これから確実に出てくるだろう。
そうでなくとも攻撃の駒不足は明らかで、クラブは1月の補強に向けて動く必要がある。すでに地元紙には、獲得候補としてフィリッペ・コウチーニョ、アントワーヌ・グリエーズマン、アンヘル・ディ・マリア、メスト・エジルらの名前が挙がっているが、本命はコウチーニョだ。崩しの局面における意外性溢れるプレーと周囲との連携能力、1対1の突破力など、今シーズンのチームに欠けている要素をすべて兼ね備える彼は、いまのバルサにとって理想的な戦力なのだ。
問題は、昨夏に頑なに放出を拒んだリバプールが、1億4500万ユーロ(約188億5000万円)もの移籍金を要求していること。ネイマールの売却益として2億2200万ユーロ(約288億6000万円)を得たものの、今夏バルサはデンベレ、パウリーニョ、ネウソン・セメド、デウロフェウの獲得に合計1億8700万ユーロ(約243億1000万円)を費やしている。
“ネイマール・バブル”の影響で市場価格が高騰している現状、この冬にビッグネームの補強に動くのは得策とは言えないが、それでもバルサは大金を費やして大物クラックの獲得を断行するのか。
もっとも、失われた攻撃力とスペクタクル性を取り戻すためには、現時点で他に選択肢はなさそうだが。
文●工藤 拓
【著者プロフィール】
1980年、東京都生まれ。桐光学園高、早稲田大学文学部卒。三浦知良に憧れて幼稚園からボールを蹴りはじめ、TVで欧州サッカー観戦三昧の日々を送った大学時代からフットボールライターを志す。その後EURO2004、W杯ドイツ大会の現地観戦を経て、2006年よりバルセロナへ移住。現在は様々な媒体に執筆している。