次節からヤマ場を迎えることになるモイーズ。
中立的な国内各紙は、古巣のエバートンでも、祖国のスコットランド代表でも、新監督として噂になりながら、双方のファンが難色を示したモイーズの採用は、ウェストハムにとって「賭け」だと見ていた。
就任初戦となった前節のワトフォード戦は、ビリッチ前監督のラストゲームとなった11節のリバプール戦(●1-4)と同様の不甲斐ない敗戦(●0-2)。モイーズは試合後、選手たちの尻を叩くような発言をしたが、メディア間では、「リスキー」と受け取られていた。
だが、実際にはリスクテイクの効果が見られた。発破をかけられたことで、主力選手がレスター戦で奮起したからだ。
その代表例が、ここまでゴールもハードワークも影を潜め、ファンに「失敗」と諦められかけていた今シーズンからの新戦力マルコ・アルナウトビッチである。出場70分間にわたり、危険なクロスを放り込み、守備にも意欲を見せた彼は、加入後最高の出来だった。
そうした戦闘意欲がチームに戻ってきたと感じたからこそ、ウェストハムのサポーターたちは、新監督の背中をチャントで押す気になったのだろう。
とはいえ、前途は多難だ。失点数ワースト2位(26)の守りは、レスター戦でも怠慢さが目立っていた。
生え抜きのキャプテンであるマーク・ノーブルにベンチ行きを命じる荒療治を施したものの、代役として先発入りを果たしたマスアクが30分に苦し紛れのファウルでPKを取られていれば、開始早々に0−2とされて、巻き返しへの気運も、ファンの新監督に対する声援も見られなかったかもしれない。
そして何より、メディアがモイーズ新体制に「希望」や「吉兆」といった言葉を用いることもなかっただろう。
この“微妙な”歓迎ムードを維持し、より強めていくためにも、同じく下位低迷中の古巣エバートン(16位)との次節は、モイーズにとって必勝の一戦となるだろう。
ここで負ければ、12月からは首位のマンチェスター・シティとの一戦(15節)に始まり、チェルシー(16節)戦、アーセナル(17節)戦のロンドン・ダービー2連戦と厳しい戦いが続くため、順位を大きく落とすことになりかねない。
ただ、上位相手といえども「爆敗」は許されず、またファンは格上とはいえ同じロンドンの2チームにはライバル心を燃やしているだけに、ここでの度重なる敗戦は、モイーズの評価をも地の底に突き落とすこととなる……。
文:山中 忍
【著者プロフィール】
やまなか・しのぶ/1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、ファンでもあるチェルシーの事情に明るい。
就任初戦となった前節のワトフォード戦は、ビリッチ前監督のラストゲームとなった11節のリバプール戦(●1-4)と同様の不甲斐ない敗戦(●0-2)。モイーズは試合後、選手たちの尻を叩くような発言をしたが、メディア間では、「リスキー」と受け取られていた。
だが、実際にはリスクテイクの効果が見られた。発破をかけられたことで、主力選手がレスター戦で奮起したからだ。
その代表例が、ここまでゴールもハードワークも影を潜め、ファンに「失敗」と諦められかけていた今シーズンからの新戦力マルコ・アルナウトビッチである。出場70分間にわたり、危険なクロスを放り込み、守備にも意欲を見せた彼は、加入後最高の出来だった。
そうした戦闘意欲がチームに戻ってきたと感じたからこそ、ウェストハムのサポーターたちは、新監督の背中をチャントで押す気になったのだろう。
とはいえ、前途は多難だ。失点数ワースト2位(26)の守りは、レスター戦でも怠慢さが目立っていた。
生え抜きのキャプテンであるマーク・ノーブルにベンチ行きを命じる荒療治を施したものの、代役として先発入りを果たしたマスアクが30分に苦し紛れのファウルでPKを取られていれば、開始早々に0−2とされて、巻き返しへの気運も、ファンの新監督に対する声援も見られなかったかもしれない。
そして何より、メディアがモイーズ新体制に「希望」や「吉兆」といった言葉を用いることもなかっただろう。
この“微妙な”歓迎ムードを維持し、より強めていくためにも、同じく下位低迷中の古巣エバートン(16位)との次節は、モイーズにとって必勝の一戦となるだろう。
ここで負ければ、12月からは首位のマンチェスター・シティとの一戦(15節)に始まり、チェルシー(16節)戦、アーセナル(17節)戦のロンドン・ダービー2連戦と厳しい戦いが続くため、順位を大きく落とすことになりかねない。
ただ、上位相手といえども「爆敗」は許されず、またファンは格上とはいえ同じロンドンの2チームにはライバル心を燃やしているだけに、ここでの度重なる敗戦は、モイーズの評価をも地の底に突き落とすこととなる……。
文:山中 忍
【著者プロフィール】
やまなか・しのぶ/1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、ファンでもあるチェルシーの事情に明るい。