プラチナ世代とネイマール世代の8年――落差の兆候はあの惜敗の2年後から

カテゴリ:日本代表

加部 究

2017年11月11日

エリート育成の成功確率では、圧倒的に競争率が高いブラジルの方が着実に代表に残っている。

今回のブラジル戦で、2009年のU-17W杯を経験していた日本の選手は杉本ただひとり。8年前のブラジル戦では柴崎のアシストでゴールも決めている。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 もちろん王国ブラジルと日本では、歴史、文化、国際的な評価などが大きく異なる。成功者が溢れるブラジルなら欧州でも信頼度が高く、下部リーグの選手にも各国スカウトの目が届く。またリーグの質、言語も含めて、欧州順応の難易度は、日本とは比較にならない。
 
 しかし宇佐美がバイエルンで出場機会を得られなかったように、ブラジル勢もネイマールを除けば、少なからず紆余曲折はあった。アリソンがローマでレギュラーに定着したのは今シーズンからだし、インテルに移籍したコウチーニョは途中エスパニョールにレンタルで出され、リバプールでも確実に認知されたのは2シーズン目からだった。カゼミーロにしても、レアル・マドリーでの成功はポルトへの貸し出しを経由している。
 
 おそらく彼らには自分の長所への揺るぎない確信、逆境を乗り越えていく強靭なメンタリティ、それに成功への切実な飢餓感があった。もしかすると柴崎にも同じサクセスストーリーを描けるチャンスがあったのかもしれないが、ブラジル勢、あるいは鹿島の先輩に当たる内田篤人と比べても、欧州進出が遅かった。
 
 一方で彼我を比べて、気になるのがエリート同士の成功確率である。競技人口を考えても、圧倒的に競争率が高いはずのブラジルの選手たちの方が、若年層から着実に代表に残ってきている。それは17歳までにどんな育て方をしたか、とともに、どこに着眼してきたか、という問題も潜んでいる可能性もある。もともとプラチナ世代は、攻撃的に上手い選手が多いと嘱望されたわけだが、技術的な仕上がりが早い反面、攻守の強度を十分に得られていない傾向が見られる。そう考えれば、逆に武藤、昌子、車屋などが頭角を表わしたのも必然になる。
 
 もちろん日本のプラチナ世代にも逆襲の可能性は残っている。だが画期的に才能に溢れた世代が、これだけ王国に水を開けられたという現実は、しっかりと検証をしておく必要がある。
 
文:加部 究(スポーツライター)
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