両サイドを活かす中央の陣容も魅力的だ。FW藤本裕豪、MF中井英人らを軸に、高いポゼッション能力を持つ。同サイドの狭いスペースでテンポ良くつないだら、逆サイドに素早く対角のパスを打ち込み、一気に切り崩す。さらには両ワイドが積極的にダイアゴナルランでバイタルエリアや裏のスペースに飛び出していく。対角のパスも時にはクサビになったり、一気にラストパスになったりと、バリエーションは豊富で、相手の守備の的を絞らせない。
 
　しかし、藤本がリーグ開幕前のヨーロッパ遠征で右太ももの肉離れで離脱すると、今度は南島がリーグ開幕３日前に中足骨骨折で同じく戦線離脱。大きな痛手を負ったが、「怪我人が出たとしても、やることに変わりはない。逆にふたりがいないぶん、チーム力の底上げのチャンスだと思っている。ふたりが帰ってきた時に、彼らがすぐに試合に出るのではなく、ベンチに座らせられるようにならないといけない」と、野田監督は多くの選手にチャンスを与え、チーム内競争を促した。
 
　そして開幕以降、起用された選手たちがしっかりとその期待に応えている。１節のG大阪ユース戦では、先発に抜擢した１年生FWの永澤竜亮が、試合を決定づける３点目のゴールを奪い、２節の富山一戦でも、途中出場した１年生FWの野原健太がゴールを決めた。３節の名古屋U18戦では、同じく１年生のMF安井拓也が初スタメンを飾り、安定したプレーを披露している。
 
　チームとしても開幕２試合は攻撃陣が爆発。アウェーのピッチコンディションに苦しんだ名古屋U18戦では、本来の素早いパスワークは影を潜めたが、「中盤で上手く回せないぶん、背後を積極的に狙った。選手には『大胆に対角に入れていこう』と話をした」と、野田監督の指示通り、右でしっかりと作って精度の高いパスを左の米澤に何度も打ち込んだ。米澤は得意のドリブルと裏への飛び出しを駆使して、再三相手ゴールに迫ったが、GKのビッグセーブに阻まれゴールを奪えず。しかし、スコアレスドローに終わったものの、「負けなかったのは評価できる。今日は中盤を省略するしかないなか、選手たちはよく戦った」と野田監督は、勝点１を掴んだ選手たちを讃えた。
 
　チャンスを与えられた１年生が躍動し、中井、米澤ら３年生も昨年の経験をベースに自信を持ってプレーをしている。これが今、チームに良い化学反応をもたらしている。
「中井と山口がもっと中心になってやってほしい。彼らがもっと選手を鼓舞して、苦しい時でもしっかりと戦えるようになることを期待したい」（野田監督）。
 
　南島、藤本の復帰によって、ワンランクもツーランクもレベルアップしたチームにするために――。昨年の『リベンジ』に燃える前年度のWEST王者に、死角はない。
 
取材・文：安藤隆人（サッカージャーナリスト）