4年連続J1残留の背景に…しぶとく生き抜く甲府カルチャーの基盤となった男の生き様

カテゴリ:Jリーグ

大島和人

2017年10月17日

今季リーグ戦出場はゼロ。それでもまだ、若手を本気で食おうとしている。

今季のリーグ戦出場はゼロだが、残り5試合、まだまだ出場は諦めていない(写真は2015年)。写真:徳原隆元

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 甲府は石原が今季限りの引退を発表しただけでなく、13年から在籍していた43歳のDF土屋征夫が京都への期限付き移籍で去っている。37歳のキャプテン山本英臣も出場時間を減らしており、端的に言えば世代交代が進んでいる。最終ラインを見ると、昨季は土屋、山本、津田琢磨という「116歳3バック」を組んだ試合が少なからずあった。しかし今季は新井に新里亮、エデル・リマに顔ぶれが一新された。
 
 若返りについて、吉田達磨監督はこう述べる。
 
「世代交代を進めようとか、進めてほしいというのは僕の意思でもなくて、クラブから(の指示)も特にない。ベストの選手たちが出ていくというベースは変わっていない。ただJ3から来た島川(俊郎)がJ1のスピードに慣れて出ていて、新里も2年目の今年はスピードに慣れてきた。世代が変わっているというより、この舞台で目のなかった選手たちがJ1 でプレーできるレベルに行きつつある」
 
 もちろんベテランが「譲った」ということは一切ない。石原に若手が出番を増やしている現状について聞くと、やや表情を歪めて、絞り出すような言葉が返ってきた。彼は言う。
 
「怪我はしていますけれど、諦めが悪いし、負けず嫌いなので……。まだ戦えると思っています。今試合に出ている若い選手は、自分で勝ち取ったものだしチームメイトなので尊重する、応援するというところはあります。でも『世代交代』という言葉は年を取ると嫌いになっちゃうので、あまり思わないようにしています」
 
 今季の石原はまだリーグ戦に一度も絡めていないが、残り5試合に向けて心が折れているわけではないし、本気で若手を食おうとしている。そんな意地が伝わってくる言葉だった。
 
 今季の甲府はサッカーの質を徐々に上げているし、キャリアの浅い選手が成長してポジションを取ったということもポジティブだ。しかし石原の経験値、いぶし銀の味わいは一朝一夕に獲得できるものでない。石原の必死にもがく姿勢、徹底した執念は甲府の粘り強いカルチャーを作る基盤になっていった。
 
取材・文:大島和人(球技ライター)
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