再び長いリハビリに入ったロナウド。再起不能説も流れたが、16か月もの時を経て、2001-02シーズンの終盤戦で、今度こそ完全復活を果たした。
 
　インテルの関係者、ファンの誰もがこれを祝福し、これからの「フェノメノ（怪物）」の爆発を期待したが、02年夏、突如としてレアル・マドリー移籍が決定。当時の監督エクトル・クーペルとの不仲が原因とされたが、バルサ退団時同様、代理人の暗躍があったのは言うまでもない。
 
　インテリスタの怒りを背に感じながらミラノを去り、「銀河系軍団」化を進めていたマドリーに加入したロナウドは、３シーズン連続で20ゴール超という高い得点力を発揮。１年目にトヨタカップ（インターコンチネンタルカップ）、リーガの優勝に大きな貢献を果たした。
 
　このように、行く先々のクラブに栄光をもたらしてきたロナウド。そしてそれは、ブラジル代表でも変わりはなかった。
 
　プロデビューから１年後の94年、アルゼンチン戦で「セレソン」に初招集されると、同年夏のアメリカ・ワールドカップに出場。ピッチに立つことはなかったが、17歳にして栄光のメンバーのひとりとなった。
 
　２年後のアトランタ・オリンピックでは、彼をはじめとして多くの有能な若手が集い、さらにここにリバウドらスター選手が加わったブラジルは「ドリームチーム」と称されたが、初戦で日本に衝撃の敗北を喫し、最終的には銅メダルに終わった。
 
　２度目のW杯となった98年フランス大会。４年前の英雄ロマーリオがメンバーから外れたこともあり、ロナウドはエースとして大会に臨み、チーム最多の４ゴールを挙げて、セレソンを２大会連続となる決勝進出に導いた。
 
　そして決戦前夜、過度なプレッシャーからか痙攣を起こすアクシデントが発生する。首脳陣は欠場も考えたが、それでは勝利の目がほぼなくなるため、ロナウドは無理を押してプレー。しかし、最悪の状態ではフランスDF陣に脅威を与えられず、チームは０-３の完敗を喫した。
 
　02年日韓大会は、チームは予選で大いに苦しみ、ロナウドは右膝の大怪我が癒えたばかりという不安な状況だったが、予想に反してブラジルは快進撃を展開。その原動力となったのがロナウドであり、８ゴールを挙げた彼は得点王となり、８年前とは異なり、今度は自らの力で母国を世界の頂点に押し上げた。
 
　06年ドイツ大会は、ロナウドにとって最後のW杯となった。ロナウジーニョ、カカ、アドリアーノとの「カルテット・マジコ」は大会の目玉でもあったが、チームはいまひとつ調子が上がらないまま、準々決勝で再びフランスの軍門に降ってしまった。
 
　とはいえ、彼自身は３ゴールを挙げてW杯通算得点数を15とし、ゲルト・ミュラーの最多記録（14点）を32年ぶりに更新するなど、ここでも歴史に名を残したのだった（この記録は14年ブラジル大会でミロスラフ・クローゼが16点目を挙げて更新）。
 
　最後のW杯とともに、ロナウドの代表キャリアも閉幕。セレソンでの最終的な個人成績は98試合出場（歴代７位）・62得点（ペレに次ぐ歴代２位）だった。
 
　クラブに話を戻すと、このドイツW杯後のシーズン途中、ロナウドは４シーズン半を過ごしたマドリーを去り、ミランに加入する。ここでの２シーズンで21試合出場・９得点という記録を残した後、09年にブラジルへ戻り、コリンチャンスの一員となった。
 
　加入年にサンパウロ州選手権、コパ・ド・ブラジル優勝の喜びを味わった彼は、2011年、栄光に彩られたキャリアの終焉を自ら告げた。
 
　ユニホームを脱いだロナウドは、コメンテーター、サッカークラブのオーナーなど様々な活動を行なっている。世界的スーパースターとしての知名度を活かし、自国開催の14年W杯では組織委員会の理事を務め、現在は古巣マドリーのアドバイザー兼大使にも就任している。
 
　引退後はすっかり“ふくよかな”見た目になったが、かつてスピードとテクニックで敵の守備をズタズタに切り裂き、あらゆるかたちでゴールを奪った史上最高のストライカー、そしてパーフェクトなサッカー選手の勇姿を、我々は永遠に忘れることはない。

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