個の発掘か?戦術の熟成か? 戦略家ハリルホジッチが最終予選で見せた“一流の妥協”

カテゴリ:日本代表

清水英斗

2017年10月04日

「ハリルホジッチは戦略家」

最終予選では戦い方を簡略化し、個の発掘を優先したハリルホジッチ監督。ワールドカップ本大会に向けて戦術の熟成が必要となる今後は、いかなる手腕を見せるのか。(C)SOCCER DIGEST

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 ただし、マンツーマンには大きなメリットもある。それは約束事のシンプルさだ。「付け」と言われた相手に付くだけ。難しいことはない。
 
 個の発掘と、戦術の熟成。活動期間が限られる代表チームで、このふたつを両立させるのは不可能だ。個を発掘するには、戦い方をシンプルにする必要があり、戦術を熟成するには、メンバーを固定する必要がある。二兎追う者は一兎も得ず。ハリルホジッチは、戦術面で妥協し、個を獲得しながら結果を出した。
 
 現実派のハリルホジッチ。オーストラリア代表のアンジェ・ポステコグルー監督のように、戦術に夢を見るタイプではない。この指揮官の面白さは戦略面にある。
 
 戦略とは、長期的、総合的な視点で立てられた指針のこと。その戦略に沿って具体的に実行する手段が、戦術だ。ハリルホジッチは戦略家。第2段階となる最終予選では〝一流の妥協〞を見た。これから始まる第3段階も興味深い。アジア以外の国との対戦で、ハリルホジッチは何を目指すのか。これまでは個の発掘を優先したが、今後は戦術面にも手を付けるのではないか。ワールドカップのレベルを考えれば、マンツーマンディフェンスだけでは明らかに厳しい。ハイプレスが機能している時はいいが、ミドルゾーンではゾーンで守れなければ、試合を組み立てられない。これは最も深刻な問題だ。
 
 ポゼッションにおける課題もある。EURO2016で見られたように、戦術的に進化した列強国は、相手にカウンターを許さないリスクマネジメントを徹底している。そんなチーム に対し、「縦の速さ」を発揮できるシーンが、はたしてどれほどあるだろうか。ボールを持たされた状況での攻め方を整理しなければ、逆に日本が「縦の速さ」を食らって失点するだろう。
 
 これからは、世界仕様の戦術にシフトしなければならない。ハリルホジッチのお手並み拝見といこう。
 
文:清水英斗(サッカーライター)
 
※『サッカーダイジェスト』2017年9月28日号(同9月14日発売)「サムライ・タクティクス」より抜粋。
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